2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720166
|
Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
堀田 幸義 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (20436182)
|
Keywords | 日本史 / 武家 / 名前 |
Research Abstract |
筆者は、これまで仙台藩伊達家を主たる対象に、禁字の問題、官途・受領名の問題、呼び名の問題の3つの観点から名前研究を進めてきた。本研究では、まず、仙台藩に見られるような武家の名前をめぐる諸法令の存在を全国規模で確認し、その概要把握を行うとともに(課題(1))、出来るだけ多くの大名家等について個別具体的な検討を行うことを最終的な課題(課題(2))としており、3年目にあたる平成22年度は専ら課題(1)に関する作業を行った。その結果、禁字の問題については、新たに、萩藩でも禁字政策が見られることが判明した。なお、各藩における禁字法令の存在および家臣たちの実名敬避行為は、藩主による重臣たちへの偏諱賜与行為の裏返しとして理解できるが、秋田藩の一門層佐竹西家では同家が佐竹宗家より代々下賜されてきた「義」字の使用を永世にわたって認めて欲しい旨を近代になってから願い出ている。藩主家と家臣家との名前をめぐる結びつきは近代社会が到来した後どのように展開されていくのか、近世社会における名前文化を歴史的に位:置づけるためにも探る必要を感じる。また、官途・受領名の問題に関しては、土浦藩における16世紀末~17世紀前半の検地帳に官途名や下司なしの省名・寮名・国名を名乗っている人物が多く記載されており、仙台藩同様に17世紀前半までは人名における兵農未分離状態が続いていたことがわかる。本研究を通して得られた結果から判断するに、こうした状況は少なくとも現在の東北~北関東にあたる地域に広く見られたと考えられる。呼び名の問題については、藩主家成員に対する特定呼称が存在するという点で各藩に共通しているが、中でも秋田藩で仙台藩伊達家同様の呼称規定が見られることがわかった。特に同藩では新藩主が「屋形様」と呼ばれるようになる時期をめぐって議論が交わされており、呼称の適用時期が厳密に定められていく様子が看取できる。
|