2009 Fiscal Year Annual Research Report
可視化される「ナショナルヒストリー」-アジア・ヨーロッパの歴史博物館の展開と現在
Project/Area Number |
20720246
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
寺田 匡宏 National Museum of Ethnology, 外来研究員 (30399266)
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Keywords | 博物館 / ナショナル・ヒストリー / 歴史表象 / 西洋史 / 展示 / 文化人類学 / イギリス / 建築 |
Research Abstract |
本年度は、昨年に引き続き、ヨーロッパの博物館におけるナショナル・ヒストリー表象のあり方についての現地でのデータ収集を行うとともに、昨年度行った調査のデータの分析と理論面での研究を進めた。現地調査はヨーロッパの中でも博物館に長い歴史を有するイギリスを中心に行い、昨年度の補足調査として、フランスにおいても調査を行った。 今年度のイギリスにおける調査で明らかになったことは、第一にイギリスにおける歴史博物館の位置づけである。イギリスにはナショナル・ヒストリーを専門に展示した歴史博物館は存在しない。しかし博物館が歴史を扱わないというわけではなく、歴史を扱った博物館は多数存在する。イギリスにおいてナショナル・ヒストリーは、博物館でそれとして明示されるのではなく、それら総体の存在として暗示的に存在するものであるといえる。昨年実施した調査におけるドイツやスロベニア・クロアチアなどと異なる社会におけるナショナル・ヒストリーのあり方がその背後にあるといえる。第二に、博物館と建築の関係である。ノーマン・フォスターによる大英博物館のリニューアルやダニエル・リベスキンドによる帝国戦争博物館北館の建築に顕著に見られるように、現代建築を積極的に取り入れ、より大規模でスペクタクルな空間の中で歴史が展示されている。その結果、これらは各国からの多数の観光客をふくむ観覧者を集めている。これは歴史像そのものの転換ではないが、歴史が展示される空間が変容することによって、歴史の受容のあり方が変化しているといえる。第三に、多文化主義などの現在進行している事象に関する展示が社会に存在しないということである。ナショナル・ヒストリー扱った博物館が存在しない分、社会の変化にともなう歴史表象の変化はゆっくりと進むと思われる。 本年と昨年得られた知見を元に、最終年度である来年度は研究のまとめを行う予定である。
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