2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730189
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
横山 和輝 Nagoya City University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (60313459)
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Keywords | 人的資本 / 小学校教育 / コーポレート・ガバナンス / 戦前日本 / 名望家 / 経済成長モデル / 地域経済 / 金融市場 |
Research Abstract |
経済成長に対して,教育による人的資本の形成ならびに金融がもつ役割は重要であると指摘される。おそらく戦前日本の経済成長においてもそうであろうが,定量的な把握を行った研究は蓄積が豊富とはいえない。 本研究の目的は,戦前日本の府県別データを用いて,教育投資の地域差,あるいは教育投資の成長に対する効果の差が,金融市場の規模の違いによって説明できるかどうかを検証することである。これは,当時各地で活躍した名望家とよばれる地域の有力者の事業熱と教育熱とが地域経済の成長に対し相互補完的であったかどうかを検証するものである。名望家は,地元での小学校教育やコーポレート・ガバナンスの側面においても,利害調整の軸となる役割を演じていた。彼らの教育熱と事業熱との関係を吟味することは,戦前日本の経済成長がどのような地域内利害調整のもとで達成されたのかを把握する重要な手がかりの1つとなる。同時に,途上国経済において,人的資本蓄積の形成と金融発展とを相互に連関させて経済成長を達成させるヒントを導く作業でもある。 具体的には,各府県の金融市場がどの程度発達しているのかを指標化し,これにより各府県をグルーピングするとともに,各府県の小学校に関する教育投資のもつ,その後の地域経済成長に対するプラスの効果について,2つのグループのうちいずれが大きかったのかを測定する。分析結果として,小学校教育に対する投資の効果は,金融市場が発展しているほど大きく,人的資本の蓄積効果は金融発展が進行しているほど大きいということがいえる。おそらくは,名望家の教育熱と事業熱は相互補完的に地域経済の成長に寄与するものであった。
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