2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730521
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Research Institution | Yachiyo International University |
Principal Investigator |
岡 敬一郎 Yachiyo International University, 学校教師学部, 講師 (90449968)
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Keywords | 教育行政 / 戦後教育改革 / 南原繁 |
Research Abstract |
本年度は、国立教育政策研究所教育図書館を訪問して戦後教育行政改革関連資料を収集した。東京大学法学部研究室図書室所蔵の「田中二郎氏旧蔵教育関係文書」についても、国立教育政策研究所教育図書館に所蔵が確認されたため、併せて閲覧した。また昨年度に引き続いて、国立国会図書館東京本館、東京大学総合図書館、千葉大学附属図書館本館を訪問し、南原繁や戦後教育行政改革に関する資料を収集した。以上の資料を『南原繁著作集』、『教育刷新委員会教育刷新審議会会議録』と併せて分析した。 さらに平成20・21年度の研究成果に基づき、日本教育行政学会において研究発表を行った。発表の内容は以下のとおりである。南原の戦後教育行政改革構想は、戦前の教育行政が集権主義的、官僚主義的であったことへの批判に端を発する。文部省に対して教育者の自主性の尊重、指揮監督から指導助言、条件整備への性格転換を求め、同時に地方については教育委員会の設置を求めて、教育の民主化と地方分権化を達成しようとしたのである。南原は教育委員会を、国民に直結し、国民全体の責任により、国民協同の事業であることを理由として支持した。この姿勢は具体的な制度構想に関する議論においても貫かれ、町村への教育委員会設置を求めるに至った。ただし教育委員の選任方法については、理想としての公選制と、日本における地方の現状に鑑みた場合の現実的な案としての任命制との間で葛藤していた。 以上の成果は、南原が教育委員会制度を支持した思想的背景を探り、また占領軍側との交渉過程を参照することなどによって、彼が戦後教育行政制度改革に果たした役割を再考していくうえでの基礎的作業として意義をもつものと考える。
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