2009 Fiscal Year Annual Research Report
北太平洋西部亜寒帯域における渦の挙動とその生物生産場への影響
Project/Area Number |
20740277
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
上野 洋路 Hokkaido University, 大学院・水産科学研究院, 助教 (90421875)
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Keywords | 北太平洋亜寒帯域 / 海洋中規模渦 / 海洋生物生産 / アラスカンストリーム |
Research Abstract |
衛星海面高度計データ・衛星海面クロロフィルデータに加え、海面水温・衛星海面クロロフィルデータ等から推定した純一次生産を用いて、アラスカ半島・アリューシャン列島南岸で形成され、西部亜寒帯循環へ伝播するアラスカンストリーム渦の生物生産への影響を調べた。その結果、アラスカンストリーム渦が北太平洋亜寒帯域中西部外洋域の生物生産に重要な役割を果たしていることが示された。 北太平洋亜寒帯域中西部外洋域の海面クロロフィルのうち、アラスカンストリーム渦の内部・周辺域に存在する割合を調べたところ、5~7月は18.5%、8~9月は18.4%であり、アラスカンストリーム渦内部・周辺域の占める面積(5~7月は13.4%、8~9月は16.1%)より有意に高いことが分かった。また、両者の差は、5~7月は5.1%、8~9月は2.3%であり、アラスカンストリーム渦は北太平洋亜寒帯域中西部外洋域の春季ブルームを強化することが示された。北太平洋亜寒帯域中西部外洋域の春季ブルームは基本的には弱いことが知られており、成層の強度が影響していることが指摘されている(Goes et al., 2004)。このことから、アラスカンストリーム渦は、水平移流による沿岸域の栄養塩・クロロフィルの外洋への輸送のみならず、成層強度を変えることによって北太平洋亜寒帯域中西部外洋域の春季ブルームに影響を与えていることが示唆された。 さらに、アラスカンストリーム渦が存在する場合としない場合で平均した純一次生産を調べたところ、渦が存在しない場合、高一次生産の海域はアリューシャン列島付近に限られていたが、渦が存在する場合は高生産海域が南方へ張り出していた。純一次生産のうち、アラスカンストリーム渦の内部・周辺域に存在する割合はその面積と比べて有意に高くはなかったが、アラスカンストリーム渦が純一次生産にも影響を与えていることが示唆された。
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