2009 Fiscal Year Annual Research Report
高温水中多層皮膜の選択的その場計測に基づく固液流動界面反応場の同定
Project/Area Number |
20760060
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
竹田 陽一 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 助教 (40374970)
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Keywords | 応力腐食割れ / 電気化学 / 酸化 / 軽水炉 |
Research Abstract |
発電用軽水炉プラント模擬環境中において形成される多層皮膜について、動的ひずみ付加下での各界面における内物質移動挙動に着目した酸化皮膜の電気化学的特性づけを行うことにより、軽水炉発電プラントにて経年劣化現象の代表である応力腐食割れ機構の解明を推進した。高温水中で動的ひずみを付加しながら接触電気抵抗ならびに電気化学インピーダンスの計測の連続計測のため、昨年度までに選択電極を試作し、皮膜インピーダンスの計測が可能であることを確認している。 今年度は、それ計測法を中心として、供試材を316Lステンレス鋼ならびにNi基合金である600合金とし、特に電位依存性に着目するため、純水環境下にて溶存酸素ならびに溶存水素を調整した環境での評価を行った。316Lステンレス鋼については、別途応力下酸化試験を実施し、内層酸化皮膜と合金界面の平坦度や局所的な酸化の侵入傾向ならびに外層皮膜厚さの経時的変化を評価した。界面における平坦度や酸化侵入傾向は経時的には、界面が粗くなり、局所的な酸化が進行するが、割れ感受性との比較には内層皮膜厚さとの関係を考慮する必要が指摘された。このことは、皮膜厚さにも支配される皮膜内における物質移動が割れに本質的であることを指摘しており、本研究にて提案しているその場計測による皮膜内移動挙動の重要性が確認できた。600合金においては、環境中水素の影響評価を実施した。加えて、合金におけるCr濃度を変化させた供試材を対象とし、溶存水素濃度の影響評価を実施した。Cr量の増加に伴い、皮膜の電気抵抗が急激に増加し始める溶存水素濃度に明確な差が確認された。これは外層の構造変化に起因するものと考えられた。外層は内層を通過し溶出した合金元素が再析出したものと仮定すれば、母地Cr濃度が内層を通過する元素移動を支配していることになり、内層直下のCr濃度や拡散について、今後より考察していく必要がある。
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