2009 Fiscal Year Annual Research Report
植物病原糸状菌が産生するオーキシンのビオトロフィック状態での侵入菌糸伸展への役割
Project/Area Number |
20780034
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
田中 栄爾 Ishikawa Prefectural University, 生物資源環境学部, 准教授 (50433199)
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Keywords | 活物寄生 / 侵入菌糸 / 組織科学 / オーキシン / イネいもち病菌 / 応答反応 |
Research Abstract |
この研究の目的は,ビオトロフィック状態の時に植物寄生菌の産生するオーキシンが,宿主植物組織内で細胞レベルの変化を誘導し,菌糸の組織内伸展促進物質として作用していることを明らかにすることである.これまで,イネいもち病菌の侵入菌糸先端にオーキシンが存在する結果を免疫組織化学的に得た.さらに,オーキシン応答レポーター遺伝子(DR5::GUS)を導入したイネを用いることによって,いもち病菌侵入菌糸周辺のイネ細胞がオーキシン応答していることが示唆された.本年度予定していたオーキシン過剰産生いもち病菌の作製と侵入感染への影響は転換株が十分に得られず,実験を継続している.そのため,オーキシン極性輸送阻害剤を用いた実験も行っていない。また,イネ組織の細胞壁ミクロフィブリル構造の観察を行う予定であったが,この仮説を支持する他の実験をおこなった.すなわち,細胞壁構造が緩むのであれば,その場所にイネのエキスパンシンが発現していることが予想される.そこで,イネのエキスパンシン発現部位を組織学的に解析するため,エキスパンシン抗体を用いた免疫組織化学染色と,エキスパンシンmRNAを標的としたin situ hybridizationをおこなった.この結果,ビオトロフィックな侵入菌糸伸展時に侵入菌糸先端付近のイネ葉鞘組織にエキスパンシンが発現していることが示唆された.この実験は,次年度に継続して確証する予定である.これまでの結果は,「イネいもち病菌がビオトロフィック状態の時に侵入菌糸先端からオーキシンを産生し,その作用としてイネ組織がオーキシン応答して細胞壁構造を緩める反応が起きている」という仮説を支持するものと考えられた.
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Research Products
(2 results)