2009 Fiscal Year Annual Research Report
鼻腔内投与型医薬品開発における投与条件の最適化に関する研究
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20790153
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
古林 呂之 Shujitsu University, 薬学部, 講師 (00399156)
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Keywords | 鼻腔内投与型製剤 / Mucociliary clearance / 経鼻吸収 / 粉末製剤 / 粘性製剤 |
Research Abstract |
本年度は、下記の研究計画1)~3)を遂行した。 1) 各種製剤添加物及び薬物によるMucociliary clearance (MC)変動の評価 MC変動と薬物の経鼻吸収動態の関係を明らかにするために、昨年度の研究で確立したin vitro MC測定法を用いて、各種製剤添加物及び薬物によるMCの変動を評価した。また、繊毛細胞の繊毛運動を連続撮影カメラにより観察し、運動回数を解析した結果、MCの変動と良好な相関関係が示され、MCの変動は薬物の繊毛運動に対する作用に起因することが明らかとなった。さらに、MCを変動させる薬物をラット鼻腔内に前投与し、薬物鼻腔内投与後の血中濃度推移を観察した結果、MCを低下させた場合に薬物の鼻腔内滞留性が向上し、経鼻吸収率の上昇が確認された。本検討では、MCと繊毛運動及び経鼻吸収性の関係を明らかにするための実験手技を確立し、MC変動時の薬物吸収性を推定する基本手法を構築することができた。 2) 粘性溶液投与時の薬物経鼻吸収性推定モデルの構築 粘性溶液からの薬物経鼻吸収性推定モデルの構築には、投与液中の薬物の拡散及び投与液の粘膜接触表面積と経鼻吸収率の関係が重要であることを明らかにしたが、十分な推定精度のモデルを構築するには至っていない。一方で、経鼻吸収においてさらに重要な因子として粘性溶液から鼻腔粘液あるいは粘膜への分配性が深く関与している可能性を見出すことができ、今後、推定モデルの完成に繋がる結果が得られた。 3) 鼻腔内投与の粉末製剤の鼻腔内挙動 昨年度確立したin vivo鼻腔内投与実験法を用いて、各種粉末製剤投与後の薬物吸収性を評価した結果、溶解度の低い薬物では、溶液投与に比べて粉末製剤(原末、顆粒剤、倍散)投与後のbioavailabilityは低くなることが明らかとなった。鼻粘膜への付着性は増加するが鼻粘膜表面の水分量は限られており、薬物の溶解が律速となっている可能性が考えられた。溶解度の低い薬物では鼻腔内滞留性の改善が必ずしも吸収率の改善に繋がるとは限らず、製剤からの薬物の溶出が経鼻吸収率を決定する重要な要因の一つであることが明らかになった。
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