2009 Fiscal Year Annual Research Report
潰瘍性大腸炎におけるセレクチンリガンド糖鎖の硫酸化を制御する硫酸転移酵素の解析
Project/Area Number |
20790278
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小林 基弘 Shinshu University, 医学系研究科, 講師 (00362137)
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Keywords | 潰瘍性大腸炎 / 翻訳後修飾 / 高内皮細静脈様血管 / MAdCAM-1 / セレクチンリガンド糖鎖 |
Research Abstract |
大腸粘膜固有層のびまん性リンパ球浸潤は潰瘍性大腸炎の特徴的像であり,このリンパ球浸潤は高内皮細静脈様血管内腔面に発現するL-セレクチン糖鎖リガンドとMucosal Addressin Cell Adhesion Molecule l(MAdCAM-1)タンパクによって惹起される.MAdCAM-1タンパクのL-セレクチン糖鎖リガンドによる翻訳後修飾が,潰瘍性大腸炎の病態形成および内視鏡所見発現にどのような関わりを持っているかを明らかにするため,活動期および寛解期潰瘍性大腸炎の組織切片を用いた免疫染色を行った.CD34(血管内皮細胞マーカー)陽性血管に占めるMAdCAM-1陽性血管の比率には活動期,寛解期の間で有意な差がみられなかったが,MAdCAM-1陽性血管に占めるMECA-79(L-セレクチンリガンド糖鎖を認識する)陽性血管の比率は活動期で有意に増加していた.レーザー共焦点顕微鏡を用いた解析では,活動期で出現する高内皮細静脈様血管内腔面にはMAdCAM-1とL-セレクチンリガンド糖鎖が同部位に局在しており,活動期特異的にMAdCAM-1がL-セレクチンリガンド糖鎖によって翻訳後修飾されている可能性が示された。RT-PCRによる解析では,硫酸転移酵素GlcNAc6ST-1,GlcNAc6ST-2のうち,GlcNAc6ST-1の発現が活動期に特異的にみられ,L-セレクチンリガンド糖鎖の硫酸化はGlcNAc6ST-1が主に行っている可能性が示された,培養細胞を用いた系では,GlcNAc6ST-2はコアタンパクCD34およびMdCAM-1上のシアリルルイスX糖鎖にほぼ同様に硫酸基を転移したが,GlcNAc6ST-1はMAdCAM-1タンパク上のシアリルルイスX糖鎖に特異的に硫酸基を転移した.以上の結果から,高内皮細静脈様血管におけるGlcNAc6ST-1を介したMAdCAM-1タンパクの翻訳後修飾が,潰瘍性大腸炎の臨床的活動度を規定する因子として重要である可能性が示された.
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