2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20790629
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
大河原 剛 Fujita Health University, 医学部, 助教 (20469034)
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Keywords | 神経分子病態学 / エネルギー代謝 |
Research Abstract |
中枢神経系における脂肪酸β酸化の特異性を細胞レベルで解析するために、神経細胞への分化研究の良いモデル系であるP19テラトカルシノーマ細胞株を用いて、脂肪酸β酸化系酵素の発現解析を行った。具体的には、P19細胞を神経細胞に分化誘導し,神経前駆細胞のマーカーや神経細胞のマーカーと共に二重染色を行うことで、ペルオキシソームの脂肪酸β酸化系酵素であるAOX1、ミトコンドリアの脂肪酸β酸化系酵素であるHADH2の発現を調べた。その結果、神経前駆細胞と神経細胞において、AOX1,HADH2が発現していることを明らかにした。さらに脂肪酸β酸化系酵素の発現を定量的に調べるために、P19細胞を用いて神経前駆細胞と神経細胞における脂肪酸β酸化系酵素の遺伝子発現をリアルタイムPCRで解析した。その結果、神経前駆細胞と神経細胞において、ミトコンドリアの脂肪酸β酸化系酵素(VLCAD,LCAD,MCAD,SCAD,MH,HADH1,HADH2,T1,TFPa,TFPb)やペルオキシソームの脂肪酸β酸化系酵素(AOX1,AOX3,LBP,DBP,PT,SCPx)が発現していることを明らかにした。さらに、この解析により、これらの酵素の発現量は神経前駆細胞から神経細胞への分化に伴って増加することが明らかとなった。これらの結果は、神経細胞においても脂肪酸β酸化が存在している可能性を示唆しており、今後この研究を進めることで、脳の栄養学的基盤が書き換えられるかもしれない。さらにペルオキシソームの脂肪酸β酸化系酵素の先天的欠損により脳の形成不全が起こることが知られており、神経前駆細胞や神経細胞における脂肪酸β酸化系の特徴を解明することにより、ペルオキシソームの脂肪酸β酸化系と脳の発達形成との関係が明らかになることが期待される。
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