2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤が口腔癌細胞株の腫瘍間質誘導に与える影響
Project/Area Number |
20791344
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
松本 直行 Nihon University, 歯学部, 助教 (20386080)
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Keywords | 癌 / リンパ管新生 / 血管新生 / 腫瘍間質誘導 / DNA転写調節 / 転移 |
Research Abstract |
口腔癌はしはしは転移を来たし、腫瘍の転移陽性症例は予後不良である。そのため、転移の経路である血管・リンパ管誘導の阻止が課題となっている。 本研究では、口腔癌細胞株の培養液にピストン脱アセチル化酵素阻害剤の一つである酪酸ナトリウム(SB)を添加した際の遺伝子発現の変化を、cDNA microarray法により網羅的に解析し、続いて血管・リンパ管誘導因子についてreal time PCR法によりmRNA発現量の変化を詳細に検討した。その結果、SB添加群は血管誘導因子であるPDGFB、血管・リンパ管誘導因子であるANGPT2、VEGF-C, VEGF-D mRNA発現の低下を認めた。また、血管誘導因子であるVEGF-A mRNA発現の軽度上昇と、アラキドン酸カスケードの律速酵素であるCOX-2 mRNA発現の著明な上昇が見られた。 これらの遺伝子の中から、特に血管・リンパ管誘導において中心的役割を持つとされるVEGF-AとVEGF-Cについて、タンパク質発現の変化をWestern blot法と免役染色法により評価した。mRNA発現量の変化と同様に、VEGF-Cタンパク発現の低下と、VEGF-Aタンパク発現の軽度上昇が見られた。 VEGFファミリーのmRNA転写はCOX-2に支配されていることが知られている。SB添加により、血管誘導因子であるVEGF-Aの転写・翻訳はCOX-2依存的に促進されるが、血管・リンパ管誘導因子であるVEGF-C、VEGF-D発現はCOX-2非依存的に抑制されるものと考えられた。 複数種の血管・リンパ管誘導因子がSB投与により抑制されたことから、SBを応用した口腔癌転移制御の可能性が示唆された。なお、上記結果を海外学術雑誌へ投稿中である。
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