2008 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳齲蝕はなぜできる?-糖原病I型患児の口腔細菌叢の比較解析から-
Project/Area Number |
20791584
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
佐藤 恭子 Nagasaki University, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (70404499)
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Keywords | 糖原病I型 / 哺乳齲蝕 / 口腔細菌叢 |
Research Abstract |
糖原病I型(von Gierke病)は肝臓にグリコーゲンが蓄積する代謝疾患で, この疾患患者はグリコーゲンの基質と成り易いショ糖, ブドウ糖, 果糖, 乳糖などの糖類の摂取が原則禁忌であり, 炭素源の摂取は主としてデンプンによる。当科を受診した糖原病I型患児は夜間も乳糖等の糖類を含まない人工乳にコーンスターチを加えたものを摂取し, 哺乳齲蝕を発症していた。この齲蝕の原因は夜間の哺乳であるが, これには齲蝕の原因物質であるショ糖が含まれていない。したがって, この患児の口腔細菌叢を解析することは, 哺乳齲蝕の成因を検討する上で重要であると考え, この患児の口腔細菌叢の解析を行い、第46回日本小児歯科学会にて発表を行った。 PCR法で検出された唾液中の菌種は, 培養法で分離しストレプトグラムで同定した菌種と結果が一致し, この検出された菌種中には, 齲蝕の原因菌のS.mutansは存在しなかった。採取唾液をMSB寒天培地に播種したところ, 単一のS.mutans様のラフ型コロニーのみが得られたが, この菌株は血液寒天培地上でα溶血性を示し, ストレプトグラムおよび菌種同定PCRでともにS. gordonii と同定された。これより, この菌株はS.mutansではなくS.gordoniiと判定され, この患児の口腔内にはS.mutansが存在しないことが示唆された。これは口腔内にショ糖が存在しないためにS.mutansが定着するのに必要な粘着性グルカンを合成することができなかったからと考えられる。今回分離されたS.gordoniiを用いてデンプンからの酸産生を観察したところ, Phenol Red液体培地の黄変は認められたが, そのpHは6.8であったことから酸産生は弱いと考えられた。また, スクロース, デンプンによる付着試験では全く試験管壁に付着しないことがわかった。
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