Research Abstract |
本年度は,途上国における環境技術移転の問題や環境政策について検討した.その結果,途上国では比較的低レベルの環境技術を用いるほうが有効に活用でき,環境保全と持続的成長を促進する可能性があることが示された.古いタイプの技術を移転するほうが政策として実効性があるのではないかという結論を得て,さらに高い技術レベルへの移行時期についても分析し,排出税や補助金などの環境政策によって移行時期が早まることを示した. また,国際協力における技術移転と環境・エネルギー政策の有効性について研究を行い,環境技術を導入する中間財企業の数に焦点を当て,CDMなどの対策の効果,技術導入や移転費用の問題を考察した.排出税や補助金が導入されれば環境技術を用いる企業の数が増えるという分析結果となった.環境規制が強化されるならば,CDMプロジェクトを通じて途上国に技術を移転する企業が増加し,先進国と途上国の両方にメリットがあることを示した.本年度は,中国でヒアリング調査や資料収集なども行い,新たな知見も得ることができ,この調査研究を踏まえて研究成果を国内学会や海外で開催された国際会議で発表し,国内外の学術雑誌へ現在投稿中である. さらに,前年度からの継続研究であり,本年度,学術雑誌に掲載された環境政策における炭素リーケージと技術普及の影響を考察した論文にて,国際貿易が行われる場合,先進国でのみ排出税政策が実施されるとき,先進国では排出量は減少するが,途上国では増加するという炭素リーケージが生じる結果を得た.そこで,国際協力として先進国からの優れた環境技術の移転が行われることの重要性を確認した.他方,環境技術戦略に焦点を当て,途上国への環境技術移転の問題や技術移転の契約交渉についても理論的分析を行っている.これまでの多面的な活動を通じて研究を深化させることにより,今後の本分野への貢献や研究のさらなる発展も期待される.
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