2020 Fiscal Year Annual Research Report
Prehistoric archaeology of resource use behaviors and the development of modern human societies in the arid inland Levant
Project/Area Number |
20H00026
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
門脇 誠二 名古屋大学, 博物館, 教授 (00571233)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池谷 和信 国立民族学博物館, 人類文明誌研究部, 教授 (10211723)
田村 亨 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 上級主任研究員 (10392630)
束田 和弘 名古屋大学, 博物館, 准教授 (80303600)
長谷川 精 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 講師 (80551605)
近藤 康久 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 准教授 (90599226)
山本 鋼志 名古屋大学, 博物館, 特任教授 (70183689)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 考古学 / 西アジア / 人類史 / 旧石器時代 / 古環境 / 狩猟採集 / ホモ・サピエンス / 資源利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は新型コロナ禍のためヨルダンの現地調査を実施できなかったが、以前の現地調査で収集した石器と岩石資料や、日本で購入できる衛星データを用いて、日本において資料の整理やデータ解析を実施した。繰越した予算によって、2022年度にヨルダンの遺跡調査を実施した。 1)石器石材の産地と利用: 2019年度のヨルダン調査によって採取した石器と石材サンプルを用いて、その岩石学的分析(チャートに含まれる微化石や石英の微細結晶、および化学組成)の分析を行った(分担者の束田和弘氏と山本鋼志氏)。また、石材から石器を製作する効率を定量的に分析するため、石器の単位重量あたりの刃部長さを求める分析を進めた(代表の門脇)。これら2つの分析は名古屋大学の学士研究として、教育の一環としても行われた。 2)水資源とその利用: 調査地のAW3D高精細版3D地形データ(解像度1m)を購入し、天然の水場周辺の水文学的解析を行う準備を進めた(分担者の近藤康久氏と池谷和信氏)。調査地において。特にカルハ山域には旧石器時代の遺跡が集中するが、その理由として天然の水場が多かったという仮説を検証するための分析である。 3)古気候の復元: 水資源の通時変化とそれへの人類の対応を明らかにするため、以前に採集されていた遺跡堆積物(中部旧石器時代のTor Faraj遺跡)を用い、主要元素組成の分析を進めた(分担者の長谷川精氏)。中部旧石器時代は、新人とネアンデルタール人がレヴァント地方(調査地域)において共存していたと言われており、その時の気候に関するデータを得るための分析である。 4)年代測定: 2019年に発掘調査したTor Sabiha遺跡やガランダル湿地堆積の年代測定を進めた(分担者の田村亨氏)。Tor Sabiha遺跡からは、中部旧石器時代の石器が採取されたが、その年代を確かめる意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、旧人絶滅から農業発生に至る新人社会の基盤形成を支えた主要な文化要素(行動)として、不安定な資源の有効利用やリスク低減につながる行動や技術が重要だったのではないかという仮説を立て、水や食料、道具資源が少ないレヴァント地方乾燥域(南ヨルダン)の先史遺跡調査を行い、得られた資料の分析を進めるものである。2020年度はヨルダン調査を実施することができなかったが、「研究実績の概要」に記したように、以前に収集した資料やデータを用いて分析を進め、その成果をとりまとめて学会発表や論文公開をすることができた。また、繰り越した予算は2022年に再開したヨルダン調査によって予定通りの執行をすることができたため、おおむね順調に研究が進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の時点で予定していた推進方策は下記である。その一部はヨルダンでの現地調査を必要とするものであるが、2022年度にヨルダンの現地調査を再開したので、2022年度にそれらを実行することができた。 1)石器石材の利用行動: 調査地において旧石器時代の遺跡が集中するカルハ山周辺には石器石材(チャート)の産地がほとんどないと言われていたが、2019年の現地調査によって幾つかの石材産地を発見した。チャート露頭の様子やチャートの特徴、露頭に散布していた石器についてなどの情報をとりまとめる予定である。また、遺跡形出土した石器の石材産地を同定する研究を進めるため、チャート露頭からサンプルを収集し、その化学組成の分析を進める予定である。 2)水資源とその利用: 旧石器時代の遺跡が集中するカルハ山域において、天然の水場分布の調査を継続する。また、その周辺の高精細地形データを用いて水文解析を進める予定である。 3)古気候の復元: 堆積物の地球科学的分析を継続すると共に、遺跡から出土した動物や植物遺存体の分析も進めて周辺環境に関する証拠を増やす。特に動物骨の保存が良好なTor Hamar遺跡を対象に、狩猟された動物種や年齢構成などの分析を進めると共に、ガゼルの歯のエナメル質に含まれる炭素・酸素安定同位体比を測定し、当時の環境を復元する分析を進める。 4)年代測定: 2019年に調査したTor Sabiha遺跡において中部旧石器時代の石器が出土した地層とその上部の地層(おそらく完新世)の年代測定をさらに進める。光ルミネッセンス年代測定と放射性炭素年代測定を行う。
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Research Products
(34 results)