2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H00041
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
坂井 正人 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (50292397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 睦 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (50648657)
松本 剛 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (80788141)
本多 薫 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (90312719)
時津 裕子 徳山大学, 福祉情報学部, 教授 (90530684)
松本 雄一 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (90644550)
大杉 尚之 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (90790973)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 世界遺産 / 人工知能 / ナスカ / 画像認識 / 地上絵 |
Outline of Annual Research Achievements |
「ナスカ地上絵の分布図作成」 (1)人工知能をナスカ地上絵研究に効果的に導入するために、航空写真に写っている「直線の地上絵」を人間が認識する際にどのような視覚情報処理が関与しているのかについて検討した。<航空写真から目視によって地上絵を抽出する作業>の一連の工程を、被験者に協力してもらい言語化した。また航空写真から「直線の地上絵」を抽出する際に、類似した形状を持つ道や車の轍と区別するための基準を明らかにするために、認知心理学的実験をおこなった。(2)「動物の地上絵」の分布調査に、人工知能を導入するための基礎研究として、航空写真を分析した。特にナスカ早期(前3~前1世紀)に制作された地上絵が集中的に分布しているナスカ台地の古道沿いの地上絵を分析したところ、「具象的な地上絵」(人間・動物・植物・道具など)だと想定できる地上絵候補を新たに50点以上同定できた。 「ナスカ土器研究」 (1)人工知能による機械学習のアルゴリズムを熟練考古学者の思考過程に近づけるために、ナスカ早期の土器に関する熟練考古学者の土器分類にかかわる概念構造・思考過程を可視化・言語化する作業を実施した。その結果、ナスカ早期の土器に関しては、特に器形が典型性判断に及ぼす影響が大きいことが明らかになった。さらに、口縁部形状など細部の形態特徴にも、典型性判断に一定の寄与がみとめられた。(2)従来のナスカ地域の土器編年に関する研究は、必ずしも層位発掘によって得られたものではないため、絶対年代に関するデータが不足している。そこで、これまでの遺跡分布調査の結果を再検討することによって、ごく短い期間のみ利用された「編年の明確な指標となる遺跡」を選定した。(3)人工知能に学習させるデータを準備するために、「直線の地上絵」に分布する土器についての過去の調査データを徹底的に整理して、学術図書として出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「ナスカ地上絵の分布図作成」 (1)<航空写真から目視によって地上絵を抽出する作業>の一連の工程を言語化することができた。また航空写真から「直線の地上絵」を抽出するために、類似した形状を持つ道や車の轍と区別するための基準を明らかにするための認知心理学実験に着手することができた。(2)航空写真の分析によって、ナスカ台地の古道沿いに50点以上の「具象的な地上絵」の候補を同定することができた。これらの地上絵候補が先スペイン期のものであるのか否かについては、現地調査によって確認することが不可欠である。しかし、コロナ禍のため現地調査が実施できなかったため、最終的な確認がとれていない。 「ナスカ土器研究」 (1)ナスカ早期の土器に関しては、熟練考古学者の土器分類において、特に器形が典型性判断に及ぼす影響が大きいことが明らかになった。さらに、口縁部形状など細部の形態特徴にも、典型性判断に一定の寄与がみとめられた。熟練考古学者を対象とする認知心理学的実験を、ナスカ早期以降の時期の土器にも適用することは、ナスカ土器研究において有益であるという見通しが得られた。(2)ナスカ土器の編年に関する先行研究を検討するために、これまでの遺跡分布調査の結果を再検討して、「編年の明確な指標となる遺跡」を選定した。しかし、コロナ禍によって現地調査が不可能であったため、これらの選定した遺跡で表面調査と試掘を実施することができなかった。(3)人工知能に学習させるデータとして、「直線の地上絵」に分布する土器に関するデータを整理する作業が完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
「ナスカ地上絵の分布図作成」 (1)ナスカ地上絵の分布調査に人工知能を導入する。主な分析対象は、ナスカ台地およびその周辺部を撮影した航空写真(最小分解能10㎝)である。学習フェーズでは、これまでの調査研究によって確定した具象的な地上絵(動物・植物・道具など)を利用する。また機械学習のアルゴリズムを作るために、これらの地上絵の分布規則に関する現地調査の成果を積極的に活用する。一方、「直線の地上絵」については、認知心理学的実験を継続する。(2)ナスカ台地を撮影した航空写真を分析することによって同定した「動物の地上絵」の候補(50点以上)を対象とする現地調査を実施する。現地調査では、これらの地上絵の制作テクニックを詳細に検討するとともに、地上絵における人間活動の痕跡である考古遺物を採取する。 「ナスカ土器研究」 (1)ナスカ土器の研究に人工知能を導入する。また人工知能による機械学習のアルゴリズムを熟練考古学者の思考過程に近づけるために、熟練考古学者の土器分類に関わる概念構造・思考過程を可視化・言語化する作業を継続する。特にナスカ早期以降の土器に関する熟練考古学者の土器分類に注目する。(2)「編年の明確な指標となる遺跡」として指定した遺跡において、表面調査と試掘を実施することによって、ナスカ地域の土器編年に関する実証的な研究を推進する。
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Research Products
(11 results)