2020 Fiscal Year Annual Research Report
自然の権利の理論と制度ー自然と人間の権利の体系化をめざして
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20H00053
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊達 規子 (大久保規子) 大阪大学, 法学研究科, 教授 (00261826)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 真 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (10232555)
原 圭史郎 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30393036)
松本 和彦 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (40273560)
山下 英俊 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (50323449)
高村 ゆかり 東京大学, 未来ビジョン研究センター, 教授 (70303518)
大塚 直 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90143346)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 環境法 / 自然の権利 / 環境権 / 公益訴訟 / 将来世代の権利 / コミュニティの権利 / 先住民族の権利 / 参加権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,①環境権,②コミュニティの権利,③将来世代の権利という,自然の権利と環境に関連した他の3つの権利の異同について理論的・制度的に研究することを通じて,自然の権利論の現在の理論的水準と課題を明らかにすることを目的とする。そのために,法学だけではなく,環境社会学,環境経済学,サステナビリティ学,環境倫理学等の観点から,各国の専門家も含めて学際的な共同研究を行う。具体的には,自然の権利の実体的側面(権利の主体,内容等)と手続的側面(政策決定および訴訟制度のあり方)を区別し,①自然の権利論の文化的・社会的背景,②自然の権利と環境に関する人間の諸権利の異同,③自然の権利の救済方法,④自然の権利を考慮した参加型の政策決定の仕組みの4つの柱を立てて,自然と人間の権利の体系化をめざしている。 初年度は,新型コロナウイルス感染症による各種の制限のため,現地調査や対面の会議は実施できなかったものの,まず,オンラインにより6回の研究会を行い,メンバーの知見と問題意識の共有を行った。また,自然の権利と環境に関連した他の権利に関する国内外の文献,法律および判例を収集するとともに,それらをデータベース化し,サーベイする作業を進めた。その結果,自然の権利を憲法,法律,判例により認める国や自治体が北米,南米で現れ,これに伴い,海外では自然の権利に関する論文が急増していることが確認された。 2021年に入ると自然の権利に関するオンラインの国際会議・セミナーが世界各地で開催されるようになったことから,これらに参加することにより,自然の権利を承認する国が南北アメリカにとどまらず,オセアニア,アフリカにも広がっていること,その背景には①人間中心主義に対する批判,②先住民族の権利・文化の尊重等,さまざまな要因があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
既存の文献,法令,判例等の収集作業を精力的に行い,研究会を通じた論点の明確化も一定の成果を挙げた。ただし,自然の権利は南米を中心に展開されていることが判明したが,スペイン語の資料が多く,また,南米の環境法の専門家は日本にほとんどいないため,その収集・分析に想定以上の時間がかかっている。また,新型コロナウイルス感染症の影響により,現地調査を計画の一部しか実施することができず,自然の権利の承認による法政策の変化等を把握することが容易ではなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
自然の権利に関する文献が増加しているだけではなく,新たな立法や判例が中南米を中心に世界各地で認められることから,引き続き情報収集・分析を行う。また,中南米については,日本で博士(法学)号を取得したブラジルの環境法の専門家を新たに研究協力者として迎えて強化を図る。さらに,新型コロナウイルス感染症対策が進み,現地調査が可能になったところから延期していたヒアリング調査を実施する。
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Research Products
(34 results)