2020 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding Long-term Economic Stagnation in Japan
Project/Area Number |
20H00071
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
星 岳雄 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (50838729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
乾 友彦 学習院大学, 国際社会科学部, 教授 (10328669)
大久保 敏弘 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (80510255)
金 榮愨 専修大学, 経済学部, 教授 (50583811)
権 赫旭 日本大学, 経済学部, 教授 (80361856)
児玉 直美 日本大学, 経済学部, 教授 (10573470)
滝澤 美帆 学習院大学, 経済学部, 教授 (50509247)
深尾 京司 一橋大学, 経済研究所, 特任教授 (30173305)
宮川 大介 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (00734667)
森川 正之 独立行政法人経済産業研究所, 所長, 所長 (70272284)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 経済長期停滞 / 企業動学 / 生産性 / 無形資産・人的資産 / 需要不足 / 負の退出効果 / ゾンビ企業 / 経済規制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は(1)企業動学と生産性、(2)無形資産・人的資産と生産性、(3)需要不足とマクロ経済政策の誤謬の三つの分野に分析の焦点を あてる。ここまでの研究実績の主要なものを各研究班ごとにまとめると次のようになる。 (1)企業動学と生産性:中小ゾンビ企業の研究では、東大CREPEで使用可能なTSRデータを整理して、ゾンビIDとゾンビ指標の計算ができるところまでこぎつけた。負の退出効果に関する研究では、TSR、企業活動基本調査、工業統計調査、経済センサスなど様々なデータを使って、生産性成長率の要因分解を行った。重要な結論として、負の退出効果の大きな部分が合併・買収によるものであることがわかったが、その分を差し引いても退出効果が負であるというパズルは残ることがわかった。 (2)無形資産・人的資産と生産性:TSRデータを用いて、米国で最近計測されている各種のビジネスダイナミズムの指標を計算して、概ね類似のパターンが得られることが発見された。ただし、米国におけるダイナミズムの低迷の主因として指摘される市場競争度の低下は日本においては観察されない。企業における大学院卒業生の採用や研究人材の活用方法がイノベーション活動に与える影響を政府個票データおよび独自のアンケート調査をつかって分析したところ、博士号保持者がいる企業ではプロダクト・イノベーションの頻度が高いことが発見された。 (3)需要不足とマクロ経済政策の誤謬:人口構造と貯蓄―投資バランスの検証では家計調査などを用いた簡単な分析では、高齢化が過剰貯蓄をもたらすという通説は単純には支持されないようだということがわかった。人口構造と生産性に関しては、TSRデータを使って、経営者の年齢と生産性の関係を分析した結果、45歳あたりまで年齢をおって上昇した後、その後は下降するということがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が全体を統括するとともに全ての研究班に参画し、研究班相互間の連携・調整を図ることによって研究を進めてきたが、新型コロナウイルス感染症の影響から、共同作業が難しくなり、研究は最初に想定したよりも遅れがちだった。特に制約になったのは、TSRデータの分析が東大CREPEの専用端末でしかできないことであった。また、当初予定していたコンファレンスなども開くことはできなかったが、それでもオンラインではあったが、10月以降毎月一回研究会を開き、 意見交換を行ってきた。今年もこのやり 方を踏襲して、研究を進め、年度末までに多くの研究で、Discussion Paperにできる程度まで論文を仕上げることを目標にする。しばらくは毎月オンラインでの研究会を続けていくが、新型コロナウィルス感染症の状況が改善すれば、対面での研究会も計画したい。
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Strategy for Future Research Activity |
当面はオンラインで毎月の研究会を続けていくが、新型コロナウィルス感染症の状況が改善すれば、対面での研究会も計画したい。本年度の予定で特筆すべきなのは、3つのアンケートの実施である。「企業動学」班の中の規制の生産性への影響の研究では、森川が中心になって 準備中の個人向けのアンケート調査を実施して、様々な規制のコストが個々の労働者によってどのように捉えられ、そして生産性にどのような 影響を与えているのかを分析する。「無形資産・人的資本」班の日本企業のアントレプレナーシップの研究でも、権が中心になって日米の大学 の大学生および卒業生に対する調査を行い、日本での起業率の低さの原因などを探る。また、同じ研究班の⑧日本企業の人的資本投資では、滝澤が中心になって、企業アンケート調査を行い、働き方、人事評価方法、職場内訓練のあり方などの情報を収集、分析する。この調査結果を企 業財務データと接合することで、人的資本投資と企業パフォーマンスおよび企業ダイナミクスとの関係を調べることができる。
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Research Products
(16 results)