2020 Fiscal Year Annual Research Report
核融合炉で使用後10年以内に再利用可能な低放射化バナジウム合金の試作開発
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20H00144
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
長坂 琢也 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (40311203)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福元 謙一 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 教授 (30261506)
田中 照也 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (30353444)
外山 健 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50510129)
小林 真 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (50791258)
矢嶋 美幸 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (70749085)
山内 有二 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80312388)
申 晶潔 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (80824747)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 核融合炉ブランケット / 高純度化 / 照射効果 / 時効 / 腐食 |
Outline of Annual Research Achievements |
不純物として含まれる有害放射化元素Ni、Co、Cu、Fe、Nb及びMoを除去するために、純バナジウムの高純度化試作を行った。工業的な精製工程の改良と横型帯溶融法を組み合わせることで、Mo以外の元素で10年以内の再利用に必要な目標濃度を満たす純バナジウムの試作に成功した。特にNi、Co、Cuが目標の0.1 mass ppm(以下ppm)に対してそれぞれ0.03、0.01及び0.05 ppmと、目標のさらに1/3、1/10及び1/2にまで低減することができた。Moについては目標の3 ppmに対し、実際には10 ppmとなって達成できなかった。ただし、Ni、Co及びCuが大きく低減できたことにより、まだ簡易計算の段階ではあるがMoが10 ppm含まれていても10年以内の再利用は可能との見通しが得られた。 合金元素であるCr、Ti濃度及び不純物元素であるOを系統的に変化させたバナジウム合金を用いて以下に述べる特性評価を開始した。 引張試験の結果からは、現行の候補組成であるV-4 mass %Cr-4 mass%Ti(以下V-4Cr-4Ti)と同等の高温(700℃)強度を得るための候補組成はV-8Cr-2Ti及びV-10Cr-1Tiであることが明らかとなった。 500℃及び700℃において0.54 dpaまでのHeイオン照射を実施した。照射硬化はTi濃度1%でピークとなり、その後2~4%では低下する挙動が明らかとなった。電子顕微鏡観察とアトムプローブ分析によると、照射硬化の主因はTiクラスターであると考えられる。 Dプラズマを照射後にリテンションを測定した結果、Ti濃度、不純物O濃度とともに水素保持量が減少することが分かった。このことから、TiとOからなる析出物が水素のトラップに関与していることが示唆された。 放射化計算では、目標不純物レベルの合金における接触線量率の詳細計算をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
合金試作は原料となるVの高純度化と、それに合金元素Cr、Tiを添加する合金化溶解に分けられる。Vの高純度化においては当初目標としていた不純物濃度に対し、Moのみ不十分な結果となったがNi、Co及びCuの低減が想定以上であったため、それぞれの影響が相殺され、総合的には10年以下再利用のための放射化基準が満たせる見通しである。当初想定していた以上の様々な高純度方策を試みたため、2020年度に得られた高純度Vによる合金化溶解までには至らなかったのでやや遅れていると判断する。ただし、放射化を抑えるために低Ti濃度領域で合金の最適濃度を探究する各種機械特性試験、熱時効試験及び照射試験は、本研究の準備段階となった科研費挑戦的萌芽研究で作製した試料を用いて先行的に開始したため順調に進んでおり、中性子照射に供すべき候補組成が明らかになってきている。放射化分析では現行候補組成V-4Cr-4TiのNIFS-HEAT-2合金における結果をまとめ、さらに試作で目標としている不純物レベルに対する詳細計算も行い予定どおり進んでいる。一方、腐食実験に関しては、液体リチウム中での窒化を模擬した腐食試験は進展しているものの、実際にリチウムを使用した実験は使用装置、治具の整備に時間を要したため開始に至っていないので、やや遅れていると判断する。 以上、大部分のテーマは順調に進んでいるものの、高純度合金試作とリチウム腐食実験で予定どおり進んでいないところがあるため、総合的にはやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に得られた高純度Vを用い、各種特性評価に共通的に用いる候補合金を溶製する。必要量の高純度Vの確保は終わっているので、2021年度当初から実施可能であり、その後の熱間加工等の準備も整っているので年度半ばまでには板材の製作まで実施できる見込みであり、その後分担者に試料を配布する。2020年度までに得られたデータより絞り込まれた組成として、V-(4-12) Cr- (0.5-4) Tiの候補合金を試作する。 2021~2022年度にかけて中性子照射を予定しており、そのための試料も作製する。ベルギー材料試験炉BR-2での中性子照射計画の検討を行った結果、当初2回予定していた照射については1回に集約することとした。理由は、予算の制約による他、1回に集約した方が大きな照射体積を確保できる見込みであること、さらに合金が他の材料から出る不純物ガスを吸収して結果に影響を及ぼすことを避けるため、専用のサブキャプセルにV合金のみ封入して中性子照射を実施すべきであることによる。 加速器イオン照射、プラズマ照射、熱時効、腐食特性の評価では、当初の計画どおり、比較的低照射量の照射及び、短時間の熱時効試験と液体リチウム中腐食試験を継続する。照射スエリング、照射硬化、水素 ヘリウム保持及び放出特性、高温強度、リチウム中腐食率や延性低下にもとづき、長時間試験に供すべき候補合金の絞り込みをする。 放射化計算においては、目標不純物レベルについてだけでなく、実際に試作して化学分析で得られた不純物濃度における放射能の評価計算をする。放射化計算では、材料の再利用が可能かどうかを示す指標となる表面接触線量率の他、貯蔵や輸送で問題となる核発熱や放射能比の評価もする予定である。 年度後半にはこれまでの成果のまとめを行い国内外の学会で成果発表をする。
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Research Products
(7 results)