2021 Fiscal Year Annual Research Report
新しい時代の太陽系物質科学:マルチスケールで見た含水小惑星の形成進化過程
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20H00188
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 智樹 東北大学, 理学研究科, 教授 (20260721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牛久保 孝行 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (10722837)
上椙 真之 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 分光推進室, 主幹研究員 (20426521)
玄田 英典 東京工業大学, 地球生命研究所, 准教授 (90456260)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | C型小惑星 / リュウグウ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年6月から小惑星探査機はやぶわ2が回収したCbタイプ小惑星リュウグウの1~8㎜サイズの岩石粒子18個に対する物質分析を行った.UV,可視,近赤外,中間赤外の波長の反射スペクトルの取得,サブミクロンの解像度での放射光CT分析によるサンプル内部構造の把握,放射光X線回折による構成鉱物の特定,ミュオンを用いた軽元素存在度測定(本測定の予算は別の科研費による),放射光XRF,XANES測定による化学組成と各種元素の化学状態の推定,走査型,透過型電子顕微鏡を用いたサンプル表面,内部の詳細観察による鉱物組織と化学組成分析,各種物性分析(破壊強度,熱拡散率,磁性強度など)を行った.また,分析結果に基づきリュウグウ母天体での固液化学平衡計算,短寿命核種崩壊熱による天体加熱のシミュレーション,衝突破壊のシミュレーションを行った.以上の分析解析結果から,小惑星リュウグウの母天体は,太陽系形成期に水とCO2氷と共に形成され,放射性元素壊変熱により氷が解け,天体内部で大規模な水岩石反応(水質変成)が起こり,天体内部の物質はMgに富む層状ケイ酸塩,炭酸塩,リン酸塩,および鉄酸化物,鉄硫化物が形成された.天体表層近くでは,低温かつ低い水岩石比のため水質変成が内部ほど進まず,変成前の物質が残っていたと考えられる.水質変成終了後,どこかのタイミングで,母天体は大きな衝突現象により衝突破壊され,かけらの一部が再集積することで現在のリュウグウになったと考えられる.この衝突破壊,再集積により母天体内部と表層近くの物質が混合され,リュウグウ表面に分布し,それらを探査機が回収したと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
小惑星リュウグウの試料分析は想定以上に多岐にわたる分析を遂行でき,リュウグウの構成物質に関して多くの情報を得ることができたため
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も引き続き,リュウグウサンプルの分析解析を進めて,より精度の高いリュウグウ形成モデルを構築する.
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