2022 Fiscal Year Annual Research Report
顕生代における宇宙塵大量流入イベントと地球環境への影響
Project/Area Number |
20H00203
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
尾上 哲治 九州大学, 国際宇宙惑星環境研究センター, 教授 (60404472)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曽田 勝仁 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 日本学術振興会特別研究員(PD) (40850459)
山下 勝行 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (50322201)
高畑 直人 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (90345059)
佐藤 峰南 九州大学, 理学研究院, 助教 (20773394)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地質学 / 地球化学 / 層位・古生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の研究では、美濃山地西部舟伏山地域の美濃帯ペルム系上部グアダルピアン(キャピタニアン)から下部三畳系層状チャートを対象に研究を行った。He同位体分析は、(1)バルク分析、(2)バルク試料の段階加熱分析、(3)酸処理試料を用いた段階加熱分析を行なった。 検討の結果、バルク分析で得られた3He濃度は、ペルム紀キャピタニアンからチャンシンジアンにかけて増加する傾向がみられた。またペルム紀/三畳紀境界より上位層では、3He濃度は急激に低下した。He同位体比(3He/4He比)は、0.3から0.8 Raの値をとり、全体としては検討セクションの下部から上部に向かって緩やかに低下する傾向がみられた。試料の段階加熱分析では、750-950℃の抽出温度で最も高い3He/4He比が得られた。研究の結果、試料中の3He/4He比が地殻岩石中でのHeの生成比(0.02 Ra)より高い値を示すこと、また地球外3Heのホスト鉱物の分解温度である750-950℃の抽出温度において、高い3He/4He比を示すことから、検討した試料に含まれる3Heは、主に地球外起源であることが示された。3He濃度および3He/4He比から地球外由来の3He濃度の変動を見積もると、キャピタニアンからチャンシンジアンにかけて増加傾向にあることが明らかになった。この地球外3He濃度の増加については、地球ヘの宇宙塵流入量増加のほかにも、堆積速度の低下によっても説明できるため、今後は美濃帯のペルム系層状チャートを通じた堆積速度との比較検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の研究において、研究試料の確保に関しては、美濃帯の三畳系試料について、予定していた全ての研究試料を採取することができた。またHe同位体分析に用いる粉末試料の作成に関しては、ほぼ作成を終えている。兵庫県丹波帯の下部~中部ペルム系チャートの一部の試料については、採取を進めることができた。He同位体分析に関しては、バルク試料の加熱法による測定を、東京大学大気海洋研究所のHelix SFTを用いて予定通りに進めることができた。研究計画で予定していたペルム紀中期からペルム紀末までの試料および、一部の中期三畳紀試料の分析が完了した。また2021年度から継続して、チャート試料に含まれる地球外3Heのホスト鉱物を濃集させたヘリウム同位体分析を試みている。強アルカリ溶液を用いて分析試料を前処理することにより、従来のバルク分析に比べて、堆積岩中の地球外3Heを程度濃集させ技術を発展させることができており、これにより地球外物質の濃度が低い試料についても、精度良く分析を進めることができるようになった。計画自体は予定通り進んでおり、全体の計画の進捗状況としては「おおむね順調に進展している」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
ペルム紀中期からペルム紀末の試料および中期三畳紀の試料に関しては、2022度までの研究でHe同位体分析をほぼ完了することができた。2023年度の研究では、これらの時代の試料に加えて、予定していたペルム紀前期から中期の試料および、後期三畳紀の試料の分析を可能な限り進める予定である。研究試料に関しては、丹波帯の下部から中部ペルム系チャートを追加で採取する。採取したチャート試料のうち、正確な年代が決まっていないものに関しては、放散虫化石およびコノドント化石を抽出し、属種の同定および堆積年代の決定を進める。微化石の処理には引き続き、技術職員を雇用して効率的に研究を進めるように取り組む。He同位体分析については、まずは上部三畳系試料から3He濃度および3He/4He比を分析し、宇宙塵フラックスを見積もる予定である。特に、天体衝突イベントの知られているノーリアン後期アラウニアンと、ノーリアン/レーティアン境界に注目して分析を進める予定である。また地球外3Heフラックスの高い、ペルム紀末の約50万年間には、ペルム紀放散虫化石種の絶滅が知られており、地球外物質の大規模な流入が地球環境に与えた影響についても、この時期の環境変動にも注意を払いながら、詳しく検討を進める予定である。
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[Presentation] Biotic extinction at the Norian/Rhaetian boundary (Upper Triassic): geochemical and isotope evidence of a previously unrecognised global event2022
Author(s)
Manuel Rigo, Tetsuji Onoue, Honami Sato, Yuki Tomimatsu, Katsuhito Soda, Linda Godfrey, Miriam Katz, Hamish J Campbell, Lydia Tackett, Martyn Golding, Jerry Lei, Jon Husson, Matteo Maron, Sara Satolli, Mariachiara Zaffani, Giuseppe Concheri, Angela Bertinelli, Marco Chiari, Lawrence Tanner
Organizer
2022 Goldschmidt Conference
Int'l Joint Research
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