2022 Fiscal Year Annual Research Report
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20H00337
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
望月 維人 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80450419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹川 崇男 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (30332597)
安藤 和也 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (30579610)
小野 輝男 京都大学, 化学研究所, 教授 (90296749)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スキルミオン / スキルミオニクス / リザバーコンピューティング / 近藤格子模型 / キラル磁性体 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の研究では、スキルミオンの持つ様々な素子機能を設計・探索と、近年発見された空間反転対称な遍歴磁性体のスキルミオン結晶が示す新しい物性現象や物質機能の探索に取り組んだ。まず、空間反転対称性のある近藤格子模型中のスキルミオン結晶が示す特異なスピン-電荷励起の性質を理論的に解明した。具体的には、時間反転対称性や結晶並進対象性に由来する複数の南部ゴールドストーンモードの存在や、低エネルギー励起におけるスピン-電荷分離現象を発見し、論文を発表した。この成果は、新しいスキルミオン物質のマイクロ波・光素子機能研究の基礎となる重要な成果である。また、スキルミオン結晶格子中を伝播しランダムに反射・干渉するスピン波の「短期記憶性」と「非線形変換性」を活用したリザバー情報処理素子を理論的に設計し、「短期記憶タスク」や「偶奇チェックタスク」など標準的な性能指数評価を行い、その高い情報処理機能を実証し、論文を発表した。この成果は、スキルミオンを活用することで高度な微細加工を必要としない高性能なスピントロニクスリザバー情報処理素子が実現できる可能性を実証した画期的な成果である。さらに、スキルミオン結晶が秘める熱電変換素子機能を理論的に発見した。円形ディスクに閉じ込めマイクロサイズのスキルミオン結晶に光や電子線を照射して放射状の温度勾配を導入すると、スキルミオンの作る創発磁場による熱拡散マグノン流のトポロジカルマグノンホール効果が起こり、その反作用としてスキルミオンマイクロ結晶の回転運動が起こる。このスキルミオンの回転運動に起因するスピン起電力発生により直流電圧が生成できることを数値シミュレーションにより発見し論文を発表した。この発見は、スキルミオンなどのトポロジカル磁気構造が、熱電変換素子の素材としても高いポテンシャルを秘めていることを初めて明らかにした画期的な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2022年度の研究では、スキルミオンが持つこれまで知られなていなかった素子機能・物質機能として「リザバー型情報処理機能」と「熱電変換機能」を世界に先駆けて理論的に発見することができた。これは近年益々盛んになっているスキルミオンなどのトポロジカル磁性研究を、新しい方向にさらに発展させる重要で画期的な成果だと考えている。また、一方で長い間、DM相互作用が活性化するキラル磁性体や極性磁性体、磁気ヘテロ接合など空間反転対称性の破れた磁性体のみで発現すると考えられてきたスキルミオンが、空間反転対称性のある遍歴磁性体において、遍歴電子に媒介された局在スピン間の長距離交換相互作用によって発現することが明らかになってきたが、2022年度の研究ではこの新しい物質系におけるスキルミオン結晶が、従来のスキルミオン物質で発現するスキルミオンとはまったく異なる特有の低エネルギー励起を示すことを世界で初めて明らかにし、スピンと電荷の選択励起や非相反性を活用した新しいマイクロ波素子や光素子への応用研究の扉を開いた。本研究課題では、スキルミオンを活用するエレクトロニクス「スピントロニクス」の創成を目指したスキルミオンの新しい物性現象や物質機能の開拓が重要な研究目的であったが、当初期待していたよりもはるかに豊かで興味深い現象や機能を発見・実証することができた。これは研究を始めた当初は思いもよらなかった成果である。また、研究の対象も当初想定していた、キラル磁性体や磁気ヘテロ接合系のスキルミオンを超えて、近年新しく発見された近藤格子磁性体などに広がっている。以上の点を鑑み、現在までの本課題の研究の進捗状況として、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究では、スキルミオンが示す新しい物質機能として「リザバー型情報処理機能」と「熱電変換機能」を世界に先駆けて理論的に発見した。また、従来知られていたスキルミオン物質だけではなく、近年発見された新しいスキルミオン物質にも研究の対象を広げ、重要な成果を上げることができた。このような研究の進捗と展開を受けて、2023年度の研究では、まず前年度に発見した物質機能のさらなる詳細な研究と、新しい研究の展開を目指す。まず、スキルミオンのリザバー型情報処理機能についてさらに深く掘り下げ、様々な情報処理タスクにおける性能評価や、情報処理能力の向上を目指した最適化や改良の理論提案を行う。具体的には、性能評価によく使われる「手書き数字認識タスク(MNISTタスク)」や、非線形変換性を性能指数を計る「NARMAタスク」などにおける評価や最適化を行う。また、2022年度の「熱電変換機能」に関する研究を通じて熱揺らぎや熱勾配が駆動するスキルミオンが興味深い物理現象や有用な物質機能を秘めているという確信を得た。そこで、このようなスキルミオンの熱駆動ダイナミクスに起因する物性現象・物質機能を、有限温度の磁化運動を記述する確率的LLG方程式を用いて広く理論的に探索し、その物理を解明すること目指す。さらに、研究の対象を拡大し、本研究を大きく発展・展開させるために、スキルミオン以外の様々なトポロジカル磁性の物性現象や物質機能、性質、物理を理論的に探索していく。具体的には、スキルミオニウムや、スキルミオンバッグ、バイメロン、ホプフィオンなどのトポロジカル磁気構造の生成手法、電流駆動ダイナミクス、熱駆動ダイナミクス、マイクロ波駆動ダイナミクスなどの理論的な探索・解明に取り組む。このような研究を通じて、世界に先駆けたスキルミオニクス創成の基礎学理および要素技術の確立を目指していきたいと考えている。
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[Journal Article] Stabilizing electromagnons in CuO under pressure2023
Author(s)
M. Verseils, P. Hemme, D. Bounoua, R. Cervasio, J-B. Brubach, S. Houver, Y. Gallais, A. Sacuto, D. Colson, T. Iijima, M. Mochizuki, P. Roy, M. Cazayous
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Journal Title
npj Quantum Materials
Volume: 8
Pages: 11/1--7
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Dry Pick-and-flip Assembly of van der Waals Heterostructures for Microfocus Angle-resolved Photoemission Spectroscopy2022
Author(s)
S. Masubuchi, M. Sakano, Y. Tanaka, Y. Wakafuji, T. Yamamoto, S. Okazaki, K. Watanabe, T. Taniguchi, J. Li, H. Ejima, T. Sasagawa, K. Ishizaka, T. Machida
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 12
Pages: 10936/1-7
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Odd-even Layer-number Effect of Valence-band Spin Splitting in WTe22022
Author(s)
M. Sakano, Y. Tanaka, S. Masubuchi, S. Okazaki, T. Nomoto, A. Oshima, K. Watanabe, T. Taniguchi, R. Arita, T. Sasagawa, T. Machida, K. Ishizaka
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Journal Title
Physical Review Research
Volume: 4
Pages: 23247/1-7
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Unconventional Short-range Structural Fluctuations in Cuprate Superconductors2022
Author(s)
D. Pelc, R.J. Spieker, Z.W. Anderson, M.J. Krogstad, N. Biniskos, N.G. Bielinski, B. Yu, T. Sasagawa, L. Chauviere, P. Dosanjh, R. Liang, D.A. Bonn, A. Damascelli, S. Chi, Y. Liu, R. Osborn, M. Greven
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 12
Pages: 20483
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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