2022 Fiscal Year Annual Research Report
高精度土砂災害予測のための山体地下水を考慮した水文モデルの開発と展開手法の構築
Project/Area Number |
20H00434
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小杉 賢一朗 京都大学, 農学研究科, 教授 (30263130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山川 陽祐 筑波大学, 生命環境系, 助教 (20611601)
勝山 正則 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (40425426)
藤本 将光 立命館大学, 理工学部, 准教授 (60511508)
佐山 敬洋 京都大学, 防災研究所, 教授 (70402930)
中谷 加奈 京都大学, 農学研究科, 准教授 (80613801)
小杉 緑子 京都大学, 農学研究科, 教授 (90293919)
正岡 直也 京都大学, 農学研究科, 助教 (90786568)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 土砂災害 / 山体地下水 / 水文モデル / 斜面崩壊 / 水源涵養 / 未経験降雨指数 |
Outline of Annual Research Achievements |
「高精度水文モデル」を開発するための山体地下水の調査を,基礎的な水文調査と併せて継続実施した。対象としたのは,地質と地形の異なる複数のサイト(小起伏花崗岩山地,大起伏花崗岩山地,小起伏堆積岩山地,大起伏堆積岩山地)である。雨量,流出量,蒸発散量,土層厚,土層地下水水位,山体地下水水位,水質,水温,トレーサー流動,土壌・基岩試料の保水性・透水性に関する観測・試験を実施した。 「集中モデル」の展開のために,「各降雨イベントの波形の類似性を識別し分類するアルゴリズム」を検討した。開発したモデルの挙動を,現地で観測された地下水位の変動と比較することにより,モデルの検証を行った。モデルにより推定された地下水位は,観測値を完全に再現することはできなかったが,豪雨時の挙動は精度よく再現できることが示唆され,土砂災害の予測に活用できる可能性が示された。解析結果に基づき,集中モデルの考え方を基礎として得られる「未経験降雨指数」が土砂災害の予測に有効である可能性を示唆した。 「物理モデル」に関しては,モデルの開発・改良を進めると共に,今後のモデルの展開に向けて,電磁探査データの活用方法について検討した。具体的には,電磁探査によって得られた地盤内の比抵抗分布と地下水挙動の対応関係を検討し,物理モデルの検証のために電磁探査データを活用する方法について考察した。 「集中観測サイト以外のサイト」へ水文モデルを展開し,高精度土砂災害予測へ繋げていくために,国内各地の土砂災害発生危険箇所をターゲットとして,過去の災害事例に関する資料収集や,地質・地形・土地利用・水文プロセス・土砂移動プロセス・対策工等に関する資料収集・現地調査を実施した。具体的には,岐阜県高山市,熊本県球磨村,広島県広島市,島根県出雲市,鳥取県大山町などを対象とした。また,関連学会に出席し,土砂災害に関する情報収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
山体地下水の調査に関して,当初の予想に反し,高水位条件における地下水データが目標数取得できていないことが判明した。信頼性のある水文モデルの開発のためには,高水位条件における十分な量の地下水データが不可欠であることから,当初は令和4年度中に観測を終了する計画であった地点における地下水観測を,令和5年5月から追加実施することに変更した。この追加観測により,十分な量のデータを蓄積することができ,水文モデルの開発・検証を無事に進めることができた。 集中(lumped)モデル,物理(physical)モデルともに,実測データに基づくモデルの細部の改良が順調に進んでいる。 モデルの展開と有用性検証に用いるためのデータ収集に関しては,当初予定していた地域を拡大して実施することができ,異なる気候・地質・地形条件下にある種々の流域を対象とした研究を進めるための準備が整いつつある。 以上の様に,研究は大きな問題なくほぼ計画通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の大きな変更は不要であり,当初の申請通り着実に研究を進めていく予定である。 水文観測に関しては,1~3年目の研究を継続しデータの拡充に努めていく。観測により得られるデータをもとに,昨年度までの研究で開発した高精度水文モデル(集中ならびに物理モデル)の高度化を図る。 その上で,水文モデルを展開するための研究を実施する。具体的には,集中モデルの展開のために,「各降雨イベントの波形の類似性を識別し分類するアルゴリズム」の検討と有用性検証を継続する。物理モデルの展開に向けては,電気探査結果ならびに電磁探査結果の解析を継続し,斜面の地質・水文構造を把握する方法の高度化を図る。 さらに集中観測サイト以外のサイトに水文モデルを展開し,過去に発生した土砂災害の再現精度の検証と将来の土砂災害発生予測を実施する。ここでは,近年,特徴的な土砂災害の発生が懸念されている全国各地の山地を解析対象とする。なお対象地の選定に当たっては,土砂災害に関する最新の情報も反映させる。
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Research Products
(16 results)