2020 Fiscal Year Annual Research Report
がん関連線維芽細胞誘導分子機構の解明とその阻害に基づく腫瘍微小環境制御
Project/Area Number |
20H00518
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐谷 秀行 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (80264282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
信末 博行 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (90525685)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 癌関連線維芽細胞 / 腫瘍微小環境 / アクチン細胞骨格 / MKL1 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪細胞など、がん組織中に存在する種々の間質細胞は、サイトカイン等の刺激によって活性化し、腫瘍微小環境の主要な構成要素である癌関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblast: CAF)へと分化する。これまでにCAFの起源や特性について明らかにされつつあるが、CAFへの分化を決定する分子機構は未解のままである。研究代表者らは最近の成果から、アクチン動態により制御される転写調節因子MKL1が体細胞のリプログラミングを誘導すること、さらにそのプロセスにおいて細胞をCAFへと転換することを見出しており、MKL1がCAF分化を決定するマスターレギュレーターとして働くことを示している。本研究は、CAF分化制御機構を解明するとともに、MKL1およびアクチン動態を制御することでCAFへの分化を阻害し微小環境制御により腫瘍抑制するという新たな治療の開発を目的として実施する。令和2年度では、悪性度の異なる骨肉腫細胞(AOおよびAXT)の培養上清を脂肪細胞に作用させることで、脂肪細胞がCAFへと転換が起こるか検討した。その結果、悪性度の高いAXTの培養上清を脂肪細胞へ処理すると、MKL1の転写活性が亢進するとともに、脂肪細胞は脱分化しCAF様細胞へと転換することを見出した。また、脂肪細胞-CAF転換のプロセスにおいてTGF-βおよびTNF-αシグナルが活性化することも分かった。加えて、アクチン細胞骨格およびMKL1を標的とした薬剤スクリーニング系の確立のため、MKL1の転写活性を評価するためのレポーターアッセイ系を構築し、実際に導入した細胞にAXTの培養上清を処理するとレポーター活性が有意に上昇することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
悪性骨肉腫細胞の培養上清を添加することで脂肪細胞においてMKL1を活性化し、CAFへと転換を誘導することを見出した。また、脂肪細胞-CAF転換にTGF-βおよびTNF-αシグナルが関与する可能性を示した。さらに、アクチン細胞骨格およびMKL1を標的とした薬剤スクリーニングのための細胞アッセイ系が確立でき、脂肪細胞からCAFへの転換抑制薬のスクリーニングを開始することが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度において、悪性骨肉腫細胞がin vitroにおいて脂肪細胞をCAFへと転換させることを見出したので、in vivoにおいても脂肪細胞-CAF転換が起こるか否か、脂肪細胞の運命追跡ができる遺伝子改変マウスを用いて検討する。また、脂肪細胞-CAF転換のプロセスにおいてTGF-βおよびTNF-αシグナルの関与が示されたので、脂肪細胞にTGF-βおよびTNF-αを発現制御することで、in vitroにおけるMKL1の活性化およびCAFマーカーの発現を調べるとともに、in vivoでの腫瘍形成性に及ぼす影響についても検討する。同時に、本年度において構築したスクリーニング系を用いて、アクチン細胞骨格およびMKL1を標的とし脂肪細胞-CAF転換を阻害する化合物のスクリーニングを実施する。最終的に腫瘍細胞がその代謝系を介して脂肪細胞をCAFに転換させる分子機構を明確にしたい。
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