2021 Fiscal Year Annual Research Report
がん関連線維芽細胞誘導分子機構の解明とその阻害に基づく腫瘍微小環境制御
Project/Area Number |
20H00518
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐谷 秀行 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (80264282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
信末 博行 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (90525685)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 癌関連線維芽細胞 / 腫瘍微小環境 / アクチン / MKL1 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪細胞など、がん組織中に存在する種々の間質細胞は、サイトカイン等の刺激によって活性化し、腫瘍微小環境の主要な構成要素である癌関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblast: CAF)へと転換する。これまでの研究でCAFの起源や特性について明らかにされつつあるが、CAFへの転換を決定する分子機構は未解のままである。研究代表者らは昨年度までに、悪性度の異なる骨肉腫細胞(AOおよびAXT)の培養上清を脂肪細胞に作用させたところ、悪性度の高いAXTの培養上清を処理した脂肪細胞(AXT-Ad)が脱分化し、CAF様細胞へと転換することを見出した。また、そのプロセスにおいてアクチン動態により制御される転写調節因子MKL1の転写活性が有意に増加することも明らかにした。令和3年度では、AXT-Adのタイムラプスイメージング解析を行ったところ、培養上清処理直後から脂肪細胞でアクチン重合が亢進し、24時間以内にCAF様細胞へと転換することが明らかとなった。次いで、AXT細胞をC57BLマウスの鼠径部脂肪組織内あるいは脂肪組織が存在しない部位へ皮下移植を行った。その結果、脂肪組織内への移植によって、AXT細胞は、より発達した骨肉腫を形成することが分かった。また組織学的解析の結果、AXT細胞の周囲の脂肪細胞が消失し、CAFマーカーであるαSMA陽性細胞が劇的に増加することを見出した。さらに、脂肪細胞においてMKL1を活性化しCAFへの転換を誘導する液性因子を明らかにする目的で、AO及びAXT細胞の代謝解析を行った。その結果、AXT細胞ではAO細胞に比べてエネルギー産生に向けて代謝が全般的に亢進しており、それらが解糖系に依存することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
タイムラプスイメージング解析によって、悪性骨肉腫細胞の培養上清を処理した脂肪細胞がin vitroにおいてCAF様細胞へと転換することが明らかとなった。また、脂肪組織が骨肉腫発達のニッチとして働くことを示すとともに、悪性骨肉腫細胞がin vivoにおいても脂肪細胞からCAF様細胞への転換を誘導する可能性を見出した。さらに、代謝解析によって、CAF誘導を引き起こす悪性骨肉腫細胞では解糖系が著しく亢進することが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度において、悪性骨肉腫細胞がin vitroだけでなくin vivoにおいても脂肪細胞をCAF様細胞へと転換させる可能性を見出したので、悪性骨肉腫細胞を脂肪細胞lineage-tracingマウスへ移植したのち、脂肪細胞に由来するCAF様細胞を採取し、RNAシーケンス解析を実施することで、in vivoにおける脂肪細胞-CAF転換の制御に関わる遺伝子セットを同定する。さらに、悪性骨肉腫細胞の培養上清を処理した脂肪細胞において解糖系酵素のノックアウトあるいは阻害剤を添加することで、解糖系代謝産物がMKL1を活性化し、脂肪細胞-CAF転換を誘導するか否か明確にする。
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