2020 Fiscal Year Annual Research Report
Modernization of imperial periphery and Nationalizing empires
Project/Area Number |
20H01334
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
篠原 琢 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20251564)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸谷 浩 明治学院大学, 国際学部, 教授 (00255621)
吉岡 潤 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (10349243)
青島 陽子 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (20451388)
西村 木綿 (西村木綿) 金沢大学, 人間社会研究域, 客員研究員 (30761035)
中澤 達哉 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60350378)
米岡 大輔 中京大学, 国際学部, 准教授 (90736901)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 帝国 / ナショナリズム / 中央ヨーロッパ / 東ヨーロッパ / 境界地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は研究分担者の具体的研究対象を相互に検討した。「辺境/境界地域の経験の帝国統治への還流」については、ロシア史における帝国研究の視角・方法論の発展と成果を検討した。実証研究としては20世紀初頭におけるロシア帝国西部境界地域の教育政策の検討を進め、帝国「辺境」の非ロシア人に対する教育(母語教育援用の是非)をめぐる議論が帝国全体の教育政策を条件づけていったことを見通した(青島)。こうした政策を18世紀末から第一次世界大戦期までの百年あまり、ポーランド世界を「ロシア世界へと同化・内部化」させようとした時期のなかに位置づけることは重要であり、さらに第一次世界大戦とポーランド独立、ソ連・ポーランド戦争、第二次世界大戦をその連続性のなかに捉えなければならない。20世紀前半における「カーゾン線」の政治的機能はそれをよく反映する(吉岡)。また戦間期ポーランドで激化する反ユダヤ主義の問題は、ロシア帝国による統治がポーランド人とユダヤ人との関係に与えた影響を分析しなければ解明できないだろう(西村)。 「国民社会の形成と帝国統治の相互規定性」については、ハプスブルク君主国を中心に検討を進めた。近世における帝権・命令権・命令権の分析を通して主権概念の検討を行うことは、帝国秩序と近代に「主権者」として現れる国民社会との関係の研究に不可欠な基礎作業である(中澤)。1848年革命期には国民社会への政治参加圏域と帝国の行政資源の配分が争われたが、これは帝国の一体性、帝国主権の確立と不可分であった(篠原)。近世から近代にいたる時期の軍政国境地帯の変遷(戸谷)、ボスニアの複合的な法領域の変容は帝国境界地域の近代化を端的に示すものであった(米岡)。「『小さな帝国』における辺境/境界地域」については、第二次世界大戦後、住民追放が行われた地域への植民も視野にいれながら検討を進めた(篠原)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は事業繰越期も含めてCOVID-19の影響が続き、現地調査が進まないことが難点だった。また計画した研究者の招聘も実現できなかった。しかし国内研究会を2回(2020年8月7日「帝国辺境の近代化」、21年3月8日「ロシアとポーランド」)に行い、「研究実績の概要」に記した成果を得た。2020年8月には国際文化センター(ポーランド、クラクフ)とバルト海沿岸地域を対象に、プロイセン王国とポーランド王国の支配の重層性、ドイツ帝国の辺境統治、および戦後の住民追放とポーランド社会との関係を主題として共同調査を行う予定だったが、実現できなかった。ただしオンラインで国際会議を行い(2020年8月25日)、グダンスク、ポンメルン地域について研究報告・討論を行った。またガリツィア・ユダヤ博物館(クラクフ、ポーランド)とはポーランド社会における「帝国後」のユダヤ人の記憶をテーマとした研究成果をまとめた展覧会を開催し、同博物館、およびヤゲウォ大学ユダヤ研究所から研究者を招いて研究集会をもった。 繰り越された課題については、国外研究者と協力しながら史料を入手し、その成果を歴史学研究会大会で報告した(篠原、「フランチシェク・パラツキーのハプスブルク帝国国制論」)。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」で示した研究成果に基づき、実証的な研究を推進すると同時に「帝国の近代化、国民化する帝国」を歴史認識に有用な概念とするべく理論化していかなければならない。帝国統治における辺境/境界地域の問題は、ウクライナ戦争によって不幸にも非常にアクチュアルな研究課題となった。研究プロジェクト申請時には、帝国統治の容態を18世紀から20世紀についていくつか時期区分をして研究を推進する計画だった:1. 帝国統治の近代化と国制の一体化(18世紀末から19世紀なかば)、2. 帝国統治の近代化と国民社会形成が相互に規定しあいながら進行する時期(19世紀なかばから第一次世界大戦期)、3. 「小さな帝国」(第一次世界大戦後に成立した国民国家を帝国統治の経験の連続の上で把握する)。2020/21年度の研究実績、討論のなかでそれぞれの時期の連続性が重要だと確認されたため、それぞれの研究課題の推進の力点の移動が必要であろう。研究対象地域については特に20世紀には国家・統治形態は激しく変化するが、その変化のダイナミズムを帝国統治からの連続性の下に分析しなければならない。
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Research Products
(26 results)
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[Book] 中欧・東欧文化事典2021
Author(s)
米岡大輔、中澤達哉、篠原琢、戸谷浩、吉岡潤ほか
Total Pages
768
Publisher
丸善出版
ISBN
978-4621306161
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