2022 Fiscal Year Annual Research Report
「社会意識の分断」に着目した政治行動の計量的解明と新たな政治社会学モデルの構築
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20H01588
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
金澤 悠介 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (60572196)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 努 北海道大学, 経済学研究院, 教授 (40281779)
吉田 徹 同志社大学, 政策学部, 教授 (60431300)
富永 京子 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (70750008)
坂本 治也 関西大学, 法学部, 教授 (30420657)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会意識 / 政治社会学 / 投票行動 / 市民参加 / 潜在クラス分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、代表性の高いデータセットを用いて、現代日本人の間に潜在する社会意識の分断をデータ内在的に解明するとともに、それと人々の政治行動の対応関係を経験的に明らかにすることである。2022年度は「社会意識と政策選好についてのweb調査」と「社会意識と市民参加についてのweb調査」の2つの大規模なweb調査を実施した。それぞれの調査の研究成果は以下の通りである。 「社会意識と政策選好についてのweb調査」では、2022年7月に18~79歳の男女7000名を対象に、政治意識、福祉政策についての選好、そして、投票行動などを調査した。福祉政策の選好についての質問の回答をもとに、潜在クラス分析を行い、回答者を分類したところ、「社会的投資型(人的資本重視)」、「社会的投資型(経済成長重視)」、「福祉志向型(弱者支援重視)」、「福祉志向型(国家成長重視)」、「リバタリアン型(国家成長重視)」、「リバタリアン型(政治的無関心)」という6つの政治意識の類型が抽出された。そして、投票行動との関係を分析したところ、6つの類型それぞれで固有の投票行動をしていることが明らかになった。この調査から社会意識の分断が人々の投票行動の違いを生み出していることが示された。 「社会意識と市民参加についてのweb調査」では、2023年1月に18~79歳の男女10575名を対象に、政治意識、福祉政策についての選好、市民参加の経験、社会運動への評価などを調査した。先の調査で解明した6つの政治意識の類型と市民参加の関係を検討したところ、類型ごとに市民参加のレパートリーが異なることが明らかになった。以上の結果は、「政治意識の分断」が市民参加の領域においても分断をもたらしていることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2つのweb調査(「社会意識と政策選好についてのweb調査」、「社会意識と市民参加についてのweb調査」)の実施・分析に時間を要したため、2022年度に実施予定であった「政治意識と環境意識についてのweb調査」を実施することができなかった。「政治意識と環境意識についてのweb調査」の予算190万円は繰り越した上で、2023年度に実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は次の2つの研究を遂行する予定である。 第一に、2022年度から繰り越した研究費をもとに、実施予定であった「政治意識と環境意識についてのweb調査」を実施する。ここでは、20~70代の男女を対象に、7000人規模のweb調査を実施する。この調査では2022年度に実施した「社会意識と政策選好についてのweb調査」で用いた質問項目によって人々の政治意識の類型を抽出した上で、それと温室効果ガス対策についての態度や環境配慮行動の関係を検討する。調査票の作成は研究代表者の金澤および研究分担者の橋本が中心となり、他の分担者の意見を取り入れながら行う。調査データの分析は金澤と研究分担者の坂本が中心となって行い、人々の政治意識と環境意識の間にどのような関係があるのかを解明する。なお、web調査にあたっては調査対象者の同意を得た上で行うとともに、個人情報保護を遵守するかたちで調査データを作成する。 第二に、2020年度から2023年度まで実施してきたweb調査の知見を総合することで、現代日本における政治意識のありかたがもたらす政治的帰結を解明する。ここでは、web調査の統計分析によって明らかになった「新しいリベラル」とでも呼べるような政治意識のありかたが投票行動や市民参加を通じて現代日本の政治環境をどのようなかたちで変容させうるのかということや環境意識や環境配慮行動を通じて地球環境のありかたにどのような影響を与えるのかということを、社会意識論、社会運動論、市民参加論、政治学、政治・経済思想などのの知見を援用しつつ解明する。
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