2020 Fiscal Year Annual Research Report
18歳市民力を育成する社会科 ・公民科の系統的・総合的教育課程編成に関する研究
Project/Area Number |
20H01670
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
唐木 清志 筑波大学, 人間系, 教授 (40273156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 功太郎 宮崎大学, 大学院教育学研究科, 教授 (00270265)
栗原 久 東洋大学, 文学部, 教授 (00345729)
井上 奈穂 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (00580747)
川崎 誠司 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (10282782)
峯 明秀 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (10379323)
大澤 克美 東京学芸大学, 教育学研究科, 教授 (20323735)
坪田 益美 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (20616495)
谷田部 玲生 桐蔭横浜大学, 法学部, 教授 (30311137)
中原 朋生 環太平洋大学, 次世代教育学部, 教授 (30413511)
藤瀬 泰司 熊本大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (30515599)
橋崎 頼子 奈良教育大学, 学校教育講座, 准教授 (30636444)
鈴木 隆弘 高千穂大学, 人間科学部, 教授 (40433685)
小瑶 史朗 弘前大学, 教育学部, 教授 (50574331)
木村 勝彦 茨城大学, 教育学部, 教授 (60241759)
田村 徳至 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (60710085)
桑原 敏典 岡山大学, 教育学域, 教授 (70294395)
橋本 康弘 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 教授 (70346295)
樋口 雅夫 玉川大学, 教育学部, 教授 (70510189)
小松 伸之 清和大学, 法学部, 准教授 (80609777)
桐谷 正信 埼玉大学, 教育学部, 教授 (90302504)
永田 忠道 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (90312199)
磯山 恭子 静岡大学, 教育学部, 教授 (90377705)
原 宏史 東海学園大学, 教育学部, 教授 (90524489)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 18歳市民力 / 社会科 / 公民科 / 公共 / 教育課程編成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、選挙権年齢と成人年齢の18歳への引き下げという法律改正の中で、これまで以上に市民としての役割が期待される18歳という年齢に着目し、小中学校の教科「社会」と高等学校の教科「公民」を通して如何にしたら「18歳市民力」を育成できるかについて、教育目標・教育内容・教育方法の各側面から体系的にアプローチし、系統的・総合的教育課程編成の在り方を明らかにすることにあった。 この目的達成を目指しこれまで研究を進めてきたが、その実績は、以下の三点にまとめることができる。 第一に、研究体制を固め、研究会等を実施しながら協議を深め、18歳市民力育成を目指した教育課程編成の枠組みを構築した。その枠組みは、教育目標に関して「資質・能力マップ」、教育内容に間して「カリキュラムマップ」とそれぞれマップを作成することで対応し、視覚的に把握できることに留意した。二つのマップに基づき、18歳市民力育成に関わる社会系教科の授業を組織するという発想である。 第二に、国内実態調査と海外比較調査を進め、18歳市民力育成の前提となる児童生徒の実態把握と、海外における18歳市民力育成に向けての取り組みの理解を図り、先に触れた二つのマップの教育的意義を確定する作業を進めた。海外比較調査は文献研究に中心に進め、日本の18歳市民力育成の取り組みに示唆となる視点を導出するに至った。また、国内実態調査では、小学5年生、中学2年生、高等学校2年生の児童生徒それぞれ約2000名、合計で約6000名に対して質問紙調査を実施し、児童生徒の実態を把握することに至った。 第三に、18歳市民力育成に向けての授業実践を「政治」「法」「経済」「倫理」の各側面より進め、適宜研究代表者や研究分担者、そして、研究協力者の間でその内容を共有しながら、授業実践の深化を進めた。その際、先の二つのマップへのフィードバックを念頭に置き、その洗練化に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響で、当初の計画通りに研究は進んでいないが、研究の実施期間や方法を一部変更しながら対処したために、「おおむね順調に進展している」という状況にある。研究に大きな遅れはなく、研究の目的は当初の予定通りに、3年間で達成できる見通しは立っている。 ただし、国内実態調査、海外比較調査、授業実践研究の大きくは三つの領域から構成される本研究において、海外比較調査の部分に関しては、大幅に予定を変更せざるを得なくなった。海外における現地調査が実施できない今、現地調査は難しいいため、文献研究に頼らざるを得ず、また、海外の専門家へのインタビュー調査もWeb会議や電子メールでのやり取りと限定的になっているのが現状である。そのような中でも研究代表者と研究分担者とが協力しながら、多くの成果を得るに至っている。 研究会等はすべて、Web会議を活用したオンラインでの開催である。一方で、国内実態調査としての児童生徒に対する質問紙調査、小学校・中学校・高等学校における授業実践、これらは実施が困難な状況の時もあったが、困難を乗り越え、最終的にはそれぞれ実施に至っている。この事実が、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断できる最大の根拠である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、以下の3点を述べることにする。 第一に、これまでは児童生徒を中心に進めてきた実態把握のための調査を、教員に対しても行うことである。小学校・中学校・高等学校の教員に対して、インタビューを中心に調査を行い、18歳市民力育成に向けてこれまでどのような取り組みを実施して、これからどのような取り組みを実施しようとしているのか、また、授業実践を進めるにあたりどのようなことが障壁となっているのか、こういった事実を掴む。そうすることで、教育課程編成の在り方の再検討が促され、より実装化された教育課程を解明することができる。 第二に、授業実践をさらに進め、二つのマップ(「資質・能力マップ」と「カリキュラムマップ」)の洗練化を図るとともに、二つのマップでは十分に触れられてこなかった、アクティブ・ラーニングに代表される教育方法に関する工夫や、カリキュラム・マネジメントとして今日注目される教科・領域間の連携についても、検討を進める。こうして、理論と実践を関連づけながら研究を進めて、教育課程の高度化に努めたい。 第三に、研究成果を広く社会に向けて発信することである。これまでも、研究会や日本公民教育学会の研究大会等で積極的に研究成果を公表してきたが、今後はこれらに加えて、報告書の作成やインターネットのホームページを活用した成果の一般公開といった取り組みを通じて、18歳市民力の育成に向けての教育実践が一つの大きな動きとなるような取り組みを継続させたい。
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