2020 Fiscal Year Annual Research Report
高等教育のユニバーサル・アクセス時代における短期大学の総合的研究
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20H01701
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Research Institution | Kagawa Junior College |
Principal Investigator |
加野 芳正 香川短期大学, その他部局等, 教授(移行) (00152827)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小方 直幸 香川大学, 教育学部, 教授 (20314776)
西本 佳代 香川大学, 大学教育基盤センター, 准教授 (20536768)
藤村 正司 広島大学, 高等教育研究開発センター, 教授 (40181391)
浦田 広朗 桜美林大学, 大学院 大学アドミニストレーション研究科(通信教育課程), 教授 (40201959)
葛城 浩一 香川大学, 大学教育基盤センター, 准教授 (40423363)
稲永 由紀 筑波大学, 大学研究センター, 講師 (80315027)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 短期大学 / 短期高等教育 / ユニバーサル・アクセス / 高等教育の修学支援新制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は4年計画の初年度であったこと、また、コロナ禍にあって研究活動が制約されたこともあって、対面での研究会の開催などはできなかったが、データの再分析や先行研究の再分析などを通して、令和3年度以降に向けての基盤を構築することができた。 (1)高等教育のユニバーサル・アクセス時代における短期高等教育の位置づけ、18歳人口を巡っての短期大学と専門学校とのせめぎ合い、私大の学部と変わらない授業料など、短期大学の高等教育システムでの位置づけを明らかにした。また、『全国短期大学一覧』(令和元年度)を分析することによって、短期大学設置70年間の短期大学の設置・廃止状況を明らかにするとともに、「高等教育グランドデザイン策定のための基礎的調査研究」(研究代表;金子元久)をもとに、短期大学進学の規定要因について再分析を行なった。そこでは「所得と学力の2変数から見て、短期大学と専門学校の進学者層はよく似ていること、ともに、学力「中の下」以下の幅広い所得層が進学していることが明らかになった。 (2)全国高校生調査(2005年)からは、短期大学は4年制大学と専門学校の中間に位置していることがわかった。「就職までのサポートがしっかりしている」「将来の仕事に役立つ知識や技術を身につけられる」などの項目がこれに該当する。「学生生活調査」からは、短大生は4大生よりも収入は少ないが、それは家庭からの給付とアルバイト収入が少ないことによることがわかった。 (3)学校基本調査からは、2010年と2020年を比較して、どの分野でも学科別学生数が減少しているが、特に「教養」「農業」などの分野で著しく、「教育」の分野では82.6%と比較的減少幅が小さい。また、「短期大学生調査」では、資格志向が強くなっており、学生生活の充実度では「普通」が17.0%から27.7%へと増えていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は共同研究であるが、コロナ禍にあって対面での研究会は実施できず、やむなくオンラインでの研究会によってチームとしての意思を確認してきた。しかし、インタビュー調査など対面が必要な調査研究は計画通りには進んでいない部分もある。ただしこの研究の研究期間は4年間であり、また、調査ができない分、先行研究の検討が進んだので、当初の研究計画は十分遂行可能である。 (1)暫定的制度として発足した短期大学は1964年に制度的に確立し、その後急速に拡大したが、1990年代半ばをピークとして縮小している。学校基本調査をもとにこの70年の歩みをたどる予定であったが、実際には2010-2020年の10年間をカバーするにとどまっている。(2)短期大学は廃校になった短期大学や、4年制大学へと昇格した大学などここの歩みは様々なである。これらの動向を『全国短期大学一覧』をもとに分析し、短期大学の設置・廃止状況を明らかにすることができた。ただし、大学単位から学科レベルに分析対象を拡大していく必要があり、この点については次年度の課題となっている。 (3)「栄養士」「看護師」「保育士」「介護福祉士」などの国家資格(受験資格)が短期大学の発展、消長にどのように係わっていったのか。この点について、「看護師」については体系的な分析ができたが、「栄養士」「介護福祉士」「保育士」については着手できておらず、次年度以降の研究遂行課題となっている。 (4)短期大学がどのような制度と理念のもとで、どのような学生を受け入れてきたのか、この点については先行研究の整理はできたが、我々の問題意識に基づいたオリジナルな調査が必要であり、調査票作りに着手することができた。この調査票を基に令和3年度には数大学を対象として実施していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、研究成果の発表スケジュールを立て、それを目安に研究を進めていく必要がある。そのために、令和2年度、令和3年度の調査研究をもとに、令和4年度には本研究をまとめて『広島大学高等教育研究叢書』を刊行するとともに、『広島大学高等教育研究叢書』に肉付けして、令和5年には著書(単行本)を刊行したい。 そのために、(1)『全国学生調査』『学生生活調査』『今日の私学財政』『高等教育グランドデザイン策定のための基礎的調査研究』等のデータの再分析を進める。(2)短期大学の理事長・学長に対するインタビュー調査を進める。(3)短期大学70年の歴史的研究を進めるために『全国短期大学一覧』の分析を進める。具体的は、設置年、規模、学科構成、学科の改廃、4年制大学への移行、短大部と4年制大学の併設、所在地等のデータである(廃止の短期大学は国立57校、公立78校、私立297校の合計432校に上る)。(4)高等教育の修学支援新制度は短期大学の消長にいかなる影響を及ぼすのかを実証的に検討する。 次に「資格」と「高学歴化」の関連を明らかにする。栄養士は短期大学・専門学校、管理栄養士は大学教育と繋がり、こうした上位資格の創設が4年制大学を有利にしている。そして、短大、専門学校は資格取得において劣位に置かれる。管理栄養士は国家試験として権威、社会的認知を高めることになったが、栄養士も国家試験へと向かっている。他方で実務経験を経ることで栄養士から管理栄養士の国家試験受験資格が得られる。介護福祉士は以前であれば卒業時に得られていたが、学歴と切り離し、国家試験合格が必要となった。逆に、資格がなくても介護施設で働くことができるようになり、介護福祉士養成校は減少している。保育士は短期大学の生命線等いうべきものであり、幼稚園教諭2種免許&保育士資格を取得させる。学歴と資格の間に短期大学を置き、社会学的な分析を進める。
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