2021 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト身体における仮想的運動神経支配入れ替えが引き起こす適応的可塑性の解明
Project/Area Number |
20H01785
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
板口 典弘 慶應義塾大学, 文学部(三田), 助教 (50706637)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 外乱 / 到達把持運動 / 重さ / 義手 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちの脳は,環境に合わせた柔軟な身体運動制御を実現している。特に,道具使用の熟達によって身体が更新・拡張される感覚(“道具の身体化”)が生じることも知られている。本研究では,道具の身体化現象を背景として,脳と,身体・道具の関係性を明らかにするとともに,感覚運動制御の適応的可塑性を支えるメカニズムの解明を目指す。本年度は到達把持運動に対する外力(外乱)がどのようにその運動制御に影響を与えるか,およびどの程度適応的な反応が得られるかを検討した。 具体的な成果としてはまず,外力をかけるためのロボットマニピュランダムを用いて,行動実験をおこなった。この時の外力は運動方向に対する粘性力を発生させるものであった。この実験から,到達把持運動の到達成分外乱の影響は出ること,到達把持の協調が運動時間増加の影響を受けないことが明らかとなった。さらに当該年度におこなった,外乱を用いない統制実験によって,外乱によって指の最大開き幅は,その影響は大きくないものの,徐々に減少することが示された。本成果については,現在論文執筆中である。 次に,重力方向への負荷増加がどのように到達把持運動に影響を与えるかを検討した。前年度に実施した研究成果がExperimental Brain Research誌から公刊された。この実験では,物体把持の成功に重要である運動軌道の高さの補償は1試行レベルで生じること,さらに腕の重さが増加した場合,運動軌道の高さはベースラインに戻ることはないことを明らかにした。さらに本年度は,重力方向への負荷増加に対する長期的な順応を検討した。この実験から,重量方向への負荷増加に対抗するための筋力に伴うノイズ増加,および疲労によるノイズ増加の二つの要因が到達把持運動の軌道高さへ影響を与えていることが明らかとなった。本成果については,現在論文執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度より,コロナウイルス対策の影響を受けて,機器が顔に接触するVR機器を用いた実験の代わりに,感染リスクの少ない行動実験,すなわち外乱下での到達把持運動課題を実施している。このような当初の計画からの大幅な変更があったものの,実験・論文等の成果は着実に出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,外力が到達把持運動に与える影響についていくつかの新知見が得られた。これは,どのように到達把持運動における到達成分と把持成分の協調的な運動制御がおこなわれているかについて貴重な示唆をもたらすものであった。今後は,指のみへの外乱をかけた際の行動変化や,脳損傷患者への行動実験等を行う予定である。
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Research Products
(2 results)