2020 Fiscal Year Annual Research Report
多重散乱情報をもちいる次世代イメージング手法の数理解析
Project/Area Number |
20H01821
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤原 宏志 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (00362583)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川越 大輔 京都大学, 情報学研究科, 助教 (30848073)
大石 直也 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (40526878)
吉川 仁 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (90359836)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 逆問題 / 輻射輸送方程式 / イメージング / 数値解析 / 数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,粒子線をもちいた次世代イメージング手法の基礎研究として,その数理モデルである輻射輸送方程式の数学解析・数値解析・数値計算を目的とする.イメージング手法として想定するのはエックス線,近赤外光,PET/SPECTでもちいられる陽電子などによる断層画像法である.初年度は,2次元における順問題の数値計算と,逆問題のうち散乱が無視できるエックス線の場合の数値解析と逆問題解析について成果を得た. 前者について,これまで輻射輸送方程式の直接計算法としては,粒子の速度方向を数値積分の標本点をもちいて離散化する Discrete Ordinate Method が主流であったが,数値解の信頼性のためには厳密解が速度方向に十分滑らかであることを仮定する必要があった.本研究では新たに,速度方向にも空間方向にも不連続性を考慮する不連続 Galerkin 法を適用し,必ずしも速度方向に大域的な滑らかさをもたない場合にも適用可能なスキームの構成に成功した. 後者については,従来のエックス線をもちいるトモグラフィの直接解法としては,逆Radon変換がもちいられてきたが,報告者は,海外の共同研究者とともに,境界積分による手法を研究している.エックス線トモグラフィは逆問題に一般的に現れる非適切性を有し,僅かな誤差の影響で数値計算が破綻することが予想されていた.そこで本研究では高周波成を除去する手法と,そのための緩和パラメータの選択手法を提案した.実際のエックス線をもちいた観測データに適用したところ,合理的な再構成を得ることができ,本手法の妥当性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本手法で対象とする粒子線をもちいるイメージングの最大の困難点は,粒子の多重散乱である.従来の散乱のない場合を対象とする逆Radon変換や有限回の散乱を対象とする場合とは全くことなる手法が必要とされるため,本研究では境界積分によって散乱信号をとらえ,再構成が独創的な点である.そのための順問題と逆問題の双方に取り組むことが本研究の特徴だが,初年度はその双方で新たな知見を得るに至った.イメージングは数学的には逆問題であり,その解析の前提として順問題の数値計算の確立が必要と考え,2次元の数値計算スキームの構成とその数値解析は当初計画通りの成果と進捗と判断している.また逆問題であるイメージングの数値計算については,散乱を含む場合にも取り組んでいるが,その過程に現れた積分方程式の解析手法を継続しておこなっている.一方で,本研究は数学理論のみならずイメージングの応用可能性も重要と考えている.そのため,実用上の困難点である観測誤差への対応も考察しなければならないが,その手法で進展が見られ,散乱が無視できる場合ではあるものの,本研究で対象とする境界積分による手法で実測データをもちいる場合に従来のRadon逆変換の場合と同程度の高精度な結果を得られることが示された.これらを総合して「おおむね順調に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
粒子線をもちいるイメージング手法の数理解析として,次年度は,散乱信号をもちいる場合の逆問題,特に再構成手法とその数値的実現に取り組む予定である.数学解析の点では,初年度に取り組んだ中で,散乱を含む場合に現れた積分方程式の解析を継続して,その解の構造を明らかとし,その結果を反映する数値解析理論を構築する.また再構成スキームとしては,初年度は散乱が無視できるエックス線の場合に有効性を示したので,この手法を散乱がある場合に拡張する予定である.数値計算において困難点と考えられるのは,数理モデルである輻射輸送方程式は,空間3次元の場合,定常状態であってもその数値計算は本質的に5次元の大規模問題となることである.そのため,まずは空間が2次元とした設定で取り組む.空間が2次元であっても数値計算は3次元の問題を扱うことになるため,初年度に得たスキームをもとに計算量と計算資源を見積もり,必要な計算を処理可能な並列計算機を導入して大規模数値計算を実装する計画である.
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Remarks |
丸め誤差の影響を軽減して高精度計算を実現するために代表者が設計・実装している多倍長計算ソフトウエアを公開している.
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Research Products
(9 results)