2020 Fiscal Year Annual Research Report
非線形光学に基づくスケーラブル光量子情報処理の基盤確立
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20H01839
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
生田 力三 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (90626475)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 量子情報 / 量子通信 / 量子インターネット / 量子周波数コム / 量子周波数変換 / 非線形光学 / パラメトリック下方変換 / 導波路共振器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、2次の非線形光学素子であるPPLN導波路を単共鳴構造の共振器内に閉じ込めた構造に基づき、(1) 偏光エンタングルした大規模な量子周波数コム、(2) 高効率波長変換による幾何学的位相を利用した高速光スイッチ、の実証実験を行った。いずれにおいても、波長780nmとその半分のエネルギーをもつ1560nm近辺の2波長の3光波混合を用いた。このうち、1560nmよりも長波長側の光のみが閉じ込められる構造の導波路共振器を用いた。 (1)では、波長780nmの励起光を単共鳴型導波路共振器に入力することで、通信波長域で周波数多重化された光子対生成が可能であることが分かっていた。本研究では、この素子をサニャック干渉回路に導入することで、1000モード以上に大規模周波数多重された偏光エンタングル光子対生成に成功した。また、これら光子対が互いに定まった位相関係を持っていることを確かめ、量子周波数コムとしての性質をもつことを明らかにした。これにより、量子通信・量子インターネットの高効率化が期待できる。 (2)では、1600nmの狭帯域半導体レーザーを励起光として、780nmと1522nm間で波長変換実験を行った。本導波路共振器による1600nmへの強い閉じ込め構造により、従来のおよそ10倍の効率での変換を実現した。これにより、780nmの入力光を1522nmに変換しさらに780nmに再変換することが可能になり、その過程に伴って付与される幾何学的位相を観測できる。実験では、斜め偏光の780nmを入力することで、励起光のオンオフ切り替えによって入力と直交する偏光状態にスイッチできることを確かめた。また、励起光の強度制御でなく周波数制御によって共鳴・非共鳴を切り替えることでも同様のスイッチ効果があることを確かめた。これにより、新しい周波数制御技術の開拓、またその量子情報への応用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた計画に基づいた実験を順調に実施し、成果を挙げることができた。また、単共鳴型の導波路共振器を用いた光学系の理論的考察により、本装置が想定以上にさまざまな用途で用いることができることが分かり、新たな理論・実験計画の着想を得ることができた。もともと計画していた次の実験準備も順調に立ち上がっている最中であり、以上のことから、当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に実現した周波数多重エンタングル光子対を発展させ、実用的な高効率量子通信系を構築する。また、単共鳴共振器に基づいた全く新しい光周波数制御系を構築・実証し、さらにそれの光子ベースの量子情報処理への応用を目指す。
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Research Products
(6 results)