2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study of non-spherical core-collapse supernovae by the first principle calculation and nuclear physics
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20H01905
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Research Institution | Numazu National College of Technology |
Principal Investigator |
住吉 光介 沼津工業高等専門学校, 教養科, 教授 (30280720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 了 東京大学, 宇宙線研究所, 特任研究員 (80844795)
古澤 峻 東京理科大学, 理学部第一部物理学科, 助教 (40737251)
松古 栄夫 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 計算科学センター, 助教 (10373185)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超新星 / 爆発メカニズム / ニュートリノ / 原子核 / 高温高密度物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
重い星の最期に起こる超新星爆発現象のメカニズムは長年の謎である。星が潰れてはね返る際の高温高密度物質におけるニュートリノ反応・伝播が鍵を握っている。ニュートリノによる加熱と対流などのダイナミクス計算は今まで近似手法で行われ、その不定性のため爆発の可否は未定である。本研究は、ニュートリノ輻射流体の厳密計算により非球対称超新星爆発メカニズムの本質を探り、最新の核物理による状態方程式を組み込み高温高密度物質の役割を確定することが目的である。初年度は、旧来の状態方程式によるシミュレーション計算の結果データにおいて状態方程式の影響に着目した分析をしつつ、コード開発と最新の状態方程式の整備を進めながらニュートリノ輻射流体計算による爆発シミュレーション実行と分析を進めた。 特に、2次元軸対称計算によるコアバウンス後の衝撃波伝播において2つの状態方程式データテーブルにより爆発・不発の違いが現れる原因について明らかにした。バウンス直後におこるプロンプト対流の引き金はエントロピー勾配の形成であるが、その出現は高温高密度物質中の原子核組成の違いによるものであり、衝撃波通過時のエネルギー損失が異なることにより引き起こされることを突き止めた。この組成の違いによる影響の普遍性を追求するため、原子核組成モデルが異なる状態方程式データテーブルを用いた2次元軸対称計算を新たに実行することができた。 また、多次元ボルツマン方程式を解く計算コードの一般相対論化を進めて、固定した時空メトリックにおけるニュートリノ輻射輸送のコード検証を行って、一般相対論化したコードを完成させた。さらに、限定的な時間範囲であるが、軸対称の制限を外した3次元空間におけるニュートリノ輻射流体計算にも成功して、バウンス直後のニュートリノ輻射流体の様子を世界で初めて明らかにした。これらにより究極の第一原理計算へ向けた整備を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ニュートリノ輻射輸送を扱うボルツマン方程式を厳密に解く手法を駆使し、最新の核物理を組み込んだ多次元的な爆発シミュレーション計算により爆発メカニズムを解明する計画を立てている。 今年度は、多次元的な爆発における状態方程式による影響の解析と計算、多次元ボルツマン方程式計算コードの一般相対論化、3次元空間におけるニュートリノ輻射流体計算の実行、という重要な進展があり、それぞれ研究成果発表まで行った。進捗状況はおおむね順調である。 特に、軸対称計算において爆発と不発に分かれた2つの計算モデルについて状態方程式の違いによる衝撃波伝播への影響を明らかにした研究成果は顕著であり、この違いを検証するために組成モデルの異なる状態方程式を採用した新たな軸対称計算を始めることができた。また、状態方程式の影響の普遍性を探るため球対称計算においても影響の探索を包括的に行い、コアバウンス直後の組成の違いとエントロピー勾配形成の関係を探る研究を開始することができた。並行して新たな状態方程式の整備へ向けた取り組みも進み、初年度の研究進捗をもとに今後の研究計画の実行目処を立てることにつながった。 計算コード開発の進展としては、一般相対論的ボルツマン方程式の解法へと拡張した計算コードの開発が進み、典型的なモデル設定における検証計算によりコードが完成した。また、3次元空間におけるニュートリノ輻射流体計算の計算実行にも成功して、6次元空間におけるニュートリノ輻射流体の解明を行った。これらにより最終的な第一原理計算へ向けたステップを進めることができた。こうした巨大計算実行に対応するためのディスクサーバーを導入して、シミュレーション計算データをアーカイブして分析するための環境整備を進めた。 今年度は新型コロナ感染症対策による制限により研究メンバーが直接集まる機会は持てず、リモート会議により必要な打合せを行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、基本的には申請時の年次計画に沿って進行していくことで問題ないと判断する。ただし、天文分野における新たな観測や、原子核分野における新たな実験データなどによる状態方程式の制限などにより、研究の順番や方向を常に改善していく必要はある。また、計算機資源の確保状況やシミュレーション実行の進展によっては研究計画を臨機応変に見直す場合もある。 軸対称計算における状態方程式の影響については、今年度行なった計算により当初の目的とする組成の違いによる影響を探ることができる見込みであるが、できる限り長時間発展を行って衝撃波発展の行方(爆発の可否)を探ることが望ましい。これは計算資源調達の状況によって異なるため、大規模計算機の今後の利用可能状況を見ながら随時検討して進めていく予定である。また、計算済みのモデルにおけるニュートリノ・重力波放出シグナルの分析も課題である。 状態方程式のデータテーブル開発と応用においては、当初の予定通り、相対論的核子多体理論による最新の状態方程式および付随する反応率のデータテーブルの整備を進めて、新たな多次元計算への応用を進めていく。今年度には球対称計算による予備的な計算チェックと旧来の状態方程式との比較の調査を始めており、今後は多次元計算への移行により多次元爆発における状態方程式の影響を探る予定である。また、状態方程式における核物理パラメータの系統的な探索も課題である。 一般相対論化については、一般相対論的な流体方程式の計算コード、時空メトリックを求めるアインシュタイン方程式の計算コードの開発に着手しており、今後はこれらの計算コードの整備および統合を進めていく予定である。また最終的な3次元空間における計算へ向けて、富岳コンピュータにおける計算資源利用により、長時間発展計算を安定に行うためのシミュレーション実行および計算コード整備が必要である。
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Research Products
(28 results)