2022 Fiscal Year Annual Research Report
三重水素標的と大強度三重水素ビームによる中性子多体系の探究
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20H01924
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三木 謙二郎 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 助教 (80727090)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
波多野 雄治 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (80218487)
今井 伸明 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (80373273) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 不安定核物理 / 中性子多体系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、当研究課題の中でも重要な三中性子系の解明について重点的に研究を推進した。昨年度までに理化学研究所RIビームファクトリー施設において、入射エネルギー510MeVにおける(t,3He)反応の実験データを取得しており、本年度はこのデータ解析を推進した。特に、重水素標的を用いた2H(t,3He)2n反応の解析を中心に進め、実験データとその解析の妥当性を検証・確立してゆくとともに、二中性子系における中性子相関についての解明を行った。具体的には、実験室系散乱角度0度および3度の双方において、2H(t,3He)2n反応の二階微分断面積を決定した。その結果、励起エネルギー <1MeVの低励起領域に二中性子系の仮想状態に由来すると考えられる強いピーク構造を観測することに成功した。中性子間相互作用として現実的核力Argonne V18ポテンシャル、反応機構としては平面波インパルス近似を採用した理論計算を導入し、実験結果との比較を行った結果、この理論計算が実験結果を概ね再現することを明らかにすることができた。 また、三中性子系観測の為の3H(t,3He)3n測定に新たに導入した三重水素標的に関しては、標的や製作装置の保管・再利用につなげるための対応をした。こうした三重水素標的の開発・利用状況や中性子多体系実験の展開状況については、複数の国内会議・国際会議などで公表することで、原子核物理コミュニティだけでなく幅広い分野に向けて共有した。そこから得られた知見を基に、三重水素標的製作手法、中性子多体系実験手法の向上のための技術開発も推進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は2020年度から開始し、当初はCOVID19問題によって研究の一時停止を余儀なくされたものの、研究体制を工夫することで概ね当初の想定の範囲のスケジュールで研究を推進することが出来ている。実際、2021年度までに理化学研究所RIビームファクトリー施設での実験を完了しており、さらに今年度に解析に注力した結果、目的とする三中性子系解明の前段階である二中性子系について、実験データの解析とその理論的解釈までたどり着くことができた。こうした状況から、本プロジェクトは順調に進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まずは主目的である三中性子系の解明について重点的に推進する。具体的には、ビームモニター系、三重水素標的系、散乱粒子分析系を含めた実験装置全系に渡る較正を完了し、3H(t,3He)3n反応の二階微分断面積を低運動量移行領域を含む幅広い運動学領域に渡って決定する。また得られた成果をもとに中性子多体系研究のさらなる発展に向けて、随時実験装置・標的の改良を推進する。
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