2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H02011
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
羽生 毅 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), グループリーダー (50359197)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 健二 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (30420491)
金子 克哉 神戸大学, 理学研究科, 教授 (40335229)
木元 克典 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(地球表層システム研究センター), グループリーダー代理 (40359162)
山本 順司 九州大学, 理学研究院, 教授 (60378536)
石塚 治 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 首席研究員 (90356444)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | メルト包有物 / 揮発性成分 / マグマ / 火山 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、火山岩試料の斑晶鉱物に含まれるメルト包有物の揮発性成分と固体元素の組成を測定することにより、マグマ生成から噴火に至る過程における揮発性成分の挙動を調べることである。そのために、島弧火山や海洋島火山の火山岩を対象として、研究に適した斑晶鉱物を含む岩石試料を選別した。試料としては海洋島玄武岩の試料としてセントヘレナ島、島弧火山の試料として鬼界カルデラのものを使用した。これらについて、ハンドピックした鉱物試料を樹脂に埋めて両面研磨したところ、セントヘレナ島のすべての試料と鬼界カルデラの一部の試料ではメルト包有物内に微小結晶が成長し不均質になっていることが分かった。そこで、加熱ステージを用いた溶融、再冷却実験を行いメルト包有物の均質化を行った。しかし、この実験過程で鉱物が酸化してしまう問題が頻発した。この問題を解決するために還元剤を試料と一緒に加熱するなどの技術改良を行い、安定的に実験を行えるようになった。分析試料についてはレーザーラマン分光分析を行い、メルト包有物の気泡部分に含まれる二酸化炭素の定量測定を行った。セントヘレナ島の試料では気泡が発達している試料が多く存在し、二酸化炭素濃度には幅があるものの比較的高い濃度で含まれていた。このことは、マグマ中の二酸化炭素濃度が高かったことに加えて、鉱物の結晶化がマグマだまりの比較的深いところで起こっていたことを示す。計画初年度に論文として発表したライババエ島の海洋島玄武岩のデータと比較すると同じ範囲の二酸化炭素濃度を示し、海洋島玄武岩のマグマ源に地球表層からスラブの沈み込みにより持ち込まれた二酸化炭素が含まれていることが示唆された。鬼界カルデラのメルト包有物については試料準備が完了したので、繰り越し承認された令和4年度まで継続して分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度より繰り越した計画項目に関して、おおむね計画どおりに実施することができた。加熱ステージを用いたメルト包有物の均質化実験において、当初はルーティーン的に行うことができると考えていたが、高温に加熱した際に試料が酸化してしまうという予期していない問題が生じた。これについて試行錯誤的に対策を試し、還元剤を用いることにより酸化を防げることを見出すまでに数か月の時間がかかってしまった。しかし、その後は失敗なく順調に均質化実験を行うことができるようになり、作業は計画していたところまで挽回できた。その他、試料の研磨作業や試料均質化後のレーザーラマン分光分析などは順調に進めることができ、研究遂行に必要なデータを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
メルト包有物の化学分析については、レーザーラマン分光分析が終わったものから二次イオン質量分析やレーザーアブレーションICP-MS分析などによる測定を研究分担者と連携して進めていく。この際に、試料の再研磨などの作業に時間と手間がかかりボトルネックになる可能性があるが、雇用した臨時研究補助員を用いて作業の迅速化を図る。当初は野外調査による新たな試料採取も計画していたが、既存試料のみでも科学的成果が上がることが期待できるので、効率化を重視して既存試料の分析に集中する。また、鉱物中のメルト包有物の分析に付随して鉱物を含む火山砕屑物の分析を行い、それらの組成を比較することでマグマの由来やマグマだまり内での結晶分別の効果を評価することができることが分かったため、後者の分析も合わせて行う。また、これらの分析と並行して、得られたデータの解釈のために既存データのコンパイルも進める。各火山に関するメルト包有物の化学組成データが得られたところから研究分担者とデータの解釈等の議論を行い、学会発表や論文投稿により順次成果を公表していく。
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