2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a monitoring method for predicting slope failure at a 1/10 cost of a traditional one
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20H02243
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
芥川 真一 神戸大学, 工学研究科, 教授 (70231850)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プラスチック光ファイバー / 斜面災害 / モニタリング / 画像処理 / レーザー光 |
Outline of Annual Research Achievements |
豪雨に起因する土砂災害による死者をゼロにするという国家的目標を達成するためには,土砂災害の予兆を捉えるためのモニタリングの方法論を根本的に見直すことによって,そのシステム導入コストを徹底的に抑えなければならない.本研究では,1)電気ではなく光でモニタリングとデータ転送を実施する,2)データロガーではなく個人所有のモバイル機器でデータの記録・分析を実施する,という2つのパラダイムシフトを提案している.このことによって,土砂災害の予兆に関連するデータはすべて光データとして収集されるため,それを画像処理で分析するアプリケーションソフトを開発して個人所有のモバイル機器にインストールすれば自分の命を守るためのモニタリングを自宅で実施できることになる.この新戦略によって危険斜面をモニタリングするシステムの導入コストが従来技術と比較して1/10以下に抑えられる可能性が有り,土砂災害による死者をゼロにするという目標達成に大きく貢献できることになる. 2021年度(2年目)には,開発しているアプリケーションソフトをX1と呼ぶことにし,その機能を充実させると共に,数種類の実験に適用し,その実効性を検証した.X1の機能充実としては,1本だけでなく,多数本のプラスチック光ファイバー(Plastic Optical Fiber, POFと表記)からのデータを同時分析するようにして,その実用性を検証した.検証実験においてはレーザー光面を水平に照射し,そこからの鉛直変位を多点で同時に計測する例,橋梁などに用いられるケーブル材の腐食を多点で計測する例,盛り土の補強工事中に行われる各種の作業中に観測される地下水やグラウト材の状況を計測する例,山岳トンネル工事に用いられる鋼製支保工の腐食計測の例を取り扱い,それらのどのケースにおいてもX1が十分な精度で目的とするデータを計測することができることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画としては,アンドロイドOSで稼働するスマートフォン上でPOFセンサーの画像を分析することができるアプリケーションソフトを開発することを目指していた.その際,同時に分析できるPOFセンサーの数は数百個レベルを想定していたが,今のところ,その数を2500程度まで上げることが可能であるとの見解を得るに至っている.これは,1台数万円のスマートフォンで予想以上の数のセンサーを取り扱うことができることを意味し,最終的なコストダウンのレベルが初期の想定を超えることが期待される成果となっている.
もう一点は,スマートフォンでモニタリングを実施している際に,そこにWifi環境があれば,スマートフォンが進めている分析の結果をクラウドにアップし,そこにアクセスできる権限を持っていれば,誰でも,どこからでもモニタリングの現状を見ることができる状態になる.これは,将来的に豪雨災害が想定される危険斜面をモニタリングする際に,スマートフォンの近くにいる人だけでなく,行政側の担当者も広範囲の状況を手に取るように把握できることを意味し,全体的な安全管理システムを構成するうえで非常に大きなメリットとなることが期待されている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,現在のアプリケーションソフトX1が有するいくつかの問題点を把握して,それらを解決するとともに,多様なユーザーが将来,このアプリを使用することを想定して,より使いやすく分かりやすいアプリケーションソフトになるように検討を進める予定である.具体的には,この研究開発に協力している数社,また,興味を示している自治体の防災担当者などと密に情報交換し,これまでとは大きく異なる新しいモニタリングの方法を普及する活動を進めてゆく予定である.
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