2020 Fiscal Year Annual Research Report
Urban History of "Disarmament": Spatial Configuration of the 17-20 Century Taiwan
Project/Area Number |
20H02340
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
青井 哲人 明治大学, 理工学部, 専任教授 (20278857)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 領域史 / 軍事的(再)領土化 / 武装解除 / 台湾史 / 清朝体制と日本植民地体制 / 土牛界と隘勇線 / 竹圍 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、17-20世紀の台湾史を、領土解体の危機と軍事的な再領土化の反復に着目して読み直す試みであり、とくに武装解除の論理とその後の地域開発の進展とを連続的に見ようとするところに特徴がある。2020年度研究計画は、その第一歩として清朝の「匪」「蕃」への軍事的領土化ならびに土牛界から屋敷構えまでの軍事的性格を帯びる領域分割(境界)の組み立てを包括的に捉えることを目的とした。この計画は、新型コロナ感染症流行の影響を受けて2022年度まで再繰越することになったが、この間、文献資料の収集整理作業を進めた。 台湾での臨地調査は2022年度にようやく実施することができた。具体的には2023年3月11-21日の12日間に、(1)清朝時代の土牛界線ならびにそれを継承し変質させた植民地期の隘勇線の調査、(2)漢人集落・屋敷の囲繞装置としての竹圍の調査、を行った。(1)は国土スケールの境界装置で、清朝時代においては漢人が蕃人とのテリトリーの境界を定めたものだが、植民地期には日本植民地政府が蕃人を統治するために設けた一種の特別行政区域の境界線であり、なおかつ蕃人の平定のために兵站と攻防に用いられる軍事的装置であった。台湾調査ではその分野の第一人者のひとりである林一宏氏(国立台湾博物館)に専門的知識の提供を受け、新北市に残る隘勇線跡を調査した。(2)は最も民衆レベルのミクロな境界装置であり、具体的には農村集落やその屋敷単体を囲む竹藪だが、これも匪・蕃から自身を防衛する一種の軍事的囲繞装置であり市壁等と比べうる性格を有する。現地調査では、蘇美如氏(蘭陽博物館)から専門的知識の提供を受け、宜蘭県の宜蘭市周辺の鎮・郷に残る竹圍を調査し、その残存状況ならびに変質の状況を把握した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染症流行の影響により2021年度への繰越、2022年度への再繰越を行うこととなったが、その間に文献研究を進めることができ、また2022年度には臨地調査も実施することができたため、2020年度研究計画としてはおおむね順調な進展と判断している。ただし、3年間の研究計画全体としては遅れが生じているので、2021年度・2022年度計画とあわせて全体的な見直しが必要となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記のとおり、2020年度計画は再繰越をしておおむね予定の内容を実施できたが、2021年度・2022年度計画とあわせて全体的な見直しが必要である。2021年度計画については、新型コロナ感染症流行が収束しない可能性も考え、臨地調査を含む事例研究の対象として沖縄を加え、2021年度計画のなかで必要に応じて実施していくこととし、実際、2021年度ならびに2022年度に沖縄調査を実施した。2022年度分については、以上の進捗をふまえて、主に本来の調査対象である台湾での調査を主軸に展開する。研究計画全体については、本来の対象である台湾のサブテーマ3つのうち1つをやや縮小し、また沖縄の成果は萌芽的に位置づける方針で進めることとしたい。
|