2021 Fiscal Year Annual Research Report
Clarification of uncertainty in ultimate strength of ship structure by developing integrated analysis system of construction, strength and reliability
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20H02375
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
生島 一樹 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80734003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辰巳 晃 大阪大学, 工学研究科, 助教 (60736487)
藤 公博 九州大学, 工学研究院, 助教 (80790716)
小森山 祐輔 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (90805110)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 最終強度解析 / 溶接力学解析 / 信頼性解析 / 大規模解析 / 構造崩壊挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、溶接力学解析と最終強度解析を統合することで、構造物の最終強度の及ぼす組立工程の影響を明らかにすることを目的としており、2021年度は、昨年度に構築した理想化陽解法FEM(Finite Element Method: 有限要素法)に基づく高速大規模溶接変形解析システムと、シェル要素を用いた最終強度解析システムを統合するシステムを開発した。本システムにおいては、ソリッド要素を用いて実施される溶接力学解析の結果を、最終強度解析で使用されるシェル要素モデル上に補間する必要があるため、ソリッド要素の積分点上の応力やひずみなどの物理量を、シェル要素の積分点に形状関数を用いて重みづけして補間するものとした。また、溶接解析により得られる組立後の変形についても、ソリッド要素の節点の変位をシェル要素の節点の変位に形状関数を用いて補間するものとした。 開発したシステムを使用して、後述する最終強度試験のために製作する試験体の最終強度に及ぼす残留応力、および、溶接変形が最終強度に及ぼす影響について、試解析を実施し、事前に検討を行った。その結果、残留応力が座屈最終強度の及ぼす影響が大きいことが確認された。 加えて、上記の解析結果を検証するために、最終強度試験体を製作した。本試験体では、溶接条件を複数設定することで、溶接組立に伴う変形と残留応力を変化させた。来年度はこの試験体の初期不整、残留応力の計測結果と溶接解析の比較から解析パラメータを推定し、これを考慮した最終強度解析を行うことで、実際の溶接変形、残留応力の分布を考慮に入れた最終強度解析を実施し、溶接組立が最終強度に及ぼす影響について検討できる見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、昨年度構築した理想化陽解法FEMに基づく溶接力学解析と、最終強度解析システムを統合するためのシステムの開発を行うことを目標とした。これを達成するために、2021年度は、溶接力学解析側のソリッド要素と、最終強度解析側のシェル要素の節点と積分点上の物理量に対して、形状関数を用いて補間するシステムを開発した。本システムを用いて、溶接力学解析により得られるソリッド要素の解析結果を、最終強度解析で使用するシェル要素の解析モデル上に補間した結果、溶接解析により得られた変位、応力、塑性ひずみなどの物理量が、シェル要素モデル上に正しく補間できていることが確認できた。そのため、溶接解析と最終強度解析を連携させるシステムを当初の予定通り構築できたといえる。 また、構築したシステムを使用して、溶接変形や残留応力が最終強度に及ぼす影響についての試解析を実施した結果、これらの影響により、最終強度が変化することが確認されたことから、本研究の目的である工作が構造最終強度に及ぼす影響の解明にアプローチできる手法を構築できた。 更に、上記のシステムを使用して得られる溶接組立が最終強度に及ぼす影響を検証するための試験体の製作も2021年度中に完了させた。これを用いた試験を最終年度に実施することで、本研究の目標を達成することを見込んでいる。 以上のように、2021年度の目標として設定した項目をおおむね達成することができたことから、本研究は順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、本研究の最終年度となることから、これまでに構築した解析システムを使用して、溶接組立が最終強度に及ぼす影響について検討する。検討対象としては、昨年度に検証実験用として製作した試験体とし、まず、この試験体を製作する際の溶接条件を種々に変更させた溶接力学解析を実施し、溶接条件が変形や残留応力に及ぼす影響を整理する。この結果を、昨年度構築した溶接力学解析と最終強度解析を統合するシステムにより、最終強度解析のシェル要素モデルに反映することで、溶接条件に対応した最終強度解析を実施する。以上を通して、数値解析上で溶接条件すなわち工作条件が最終強度に与える影響について示す見込みである。 数値解析上で得られた傾向を検証するために、昨年度製作した試験体を用いた最終強度試験を行う。これにより、数値解析の妥当性を検証する。また、本試験においては、試験中の試験体の変形挙動を計測することで、構造物の崩壊挙動を詳細に把握し、最終強度解析の高度化につなげることを計画している。 以上により、本研究の目的である、溶接組立すなわち工作工程が構造物の最終強度に及ぼす影響を明らかにし、工作により強度のバラツキの明確化にアプローチする予定である。
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