2020 Fiscal Year Annual Research Report
Spatiotemporally developed self-propelled objects
Project/Area Number |
20H02712
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中田 聡 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 教授 (50217741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長山 雅晴 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (20314289)
北畑 裕之 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (20378532)
伴野 太祐 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (70613909)
末松 信彦 明治大学, 総合数理学部, 専任准教授 (80542274)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非線形 / 自己駆動 / 非平衡 / リズム / パターン / 自己組織化 / 分岐 / 振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は次の1-3を目的として実施した。各目的と得られた研究成果を示す。 1. 環境に対する応答として多様かつ効率的な運動様相の発現: まずSodium Dodecyl Sulfate水溶液に、自己駆動体である樟脳円板を置いた系について実験を行った。具体的には、プラスチック円板を樟脳円板の底面に接着することにより水面と接する樟脳円板の面積を変化させたところ、接触面積に依存して振動運動の振幅と最高速度が増加した。この結果より自己駆動体の底面で蓄積する物質量が振動運動の駆動力に反映されることが明らかになった(JPCB, 2021, 125, 1674)。次に相転移温度で表面圧(Π)-表面積(A)曲線が変化する両親媒性分子を用いた樟脳円板の自己駆動について実験した。その結果、Π-A曲線に依存した特徴的な運動様相を発現することに成功した(JPCB, 2020, 124, 5524)。その他、履歴現象を利用した駆動力分子の濃度反転による自律反転系や液滴系の往復運動系を構築した(PCCP, 2020, 22, 13123; Soft Matter, 2020, 17, 388)。 2. 可逆的な走化性を持つ自己駆動系の構築: クマリン誘導体と塩基との反応に基づいて、可逆的走化性の実験系を構築した。その結果、塩基量に依存して特徴的な可逆的走化性を示した。具体的には、少量塩基では連続運動、中量では可逆的走化性、大量では振動運動が発現した。これらについては現在論文にまとめているところである。 3. 自律的な非平衡の維持による持続的な自己駆動体の構築: 酵素反応の非線形性を利用した再生系を設計し、基礎実験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
両親媒性分子の分子構造が、駆動力の指標となる「表面圧ー表面積特性」と反応ダイナミクスに反映させて、特徴的な運動様相を再現している。 履歴現象、同期、分岐等、特徴的な運動様相を非線形科学に基づいて構築できている。 分担者とのオンライン議論も定期的に行い、理論と実験の両輪から研究を進展させている。 実験系についても順調に拡張していると考えられる。両親媒性分子の物性評価のために購入した装置も順調に稼働し、研究の進展に役立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
両親媒性分子の相転移、水素結合、ππスタッキング、イオンの添加による分子間相互作用に基づいて特徴的な「表面圧(Π)ー表面積(A)曲線」をつくる。ΠーA曲線は二次元のポテンシャルに相当するので、極小値を持つ特徴的なポテンシャルを作ることにより、ポテンシャルの形に依存した特徴的な往復運動を発現させる。光異性化による両親媒性分子の設計も同時に進め、同様に分光学的な物性評価を行う。クマリン誘導体を用いた可逆的な走化性(従来型の正の走化性と最も高濃度の化学刺激場所からの脱出の繰り返し)については、誘導体の反応速度との関係を明確にする。また酵素反応の非線形反応を用いた自己駆動体については、酵素活性のpH依存性を活用した振動運動を発現するとともに、サイクル系又は再生系を導入する。これらの実験結果について、非線形科学の観点からの解析や数理モデルについて分担者と議論を深め、実験系にフィードバックさせる。
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