2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of breeding materials for reducing aluminum content in tea leaves by genome-wide association analysis
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20H02886
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
一家 崇志 静岡大学, 農学部, 准教授 (90580647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣野 祐平 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 上級研究員 (10391418)
森田 明雄 静岡大学, その他部局等, 理事 (20324337)
川木 純平 静岡県農林技術研究所, 静岡県農林技術研究所, 研究員 (60881539)
古川 一実 沼津工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (90353151)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | チャ / アルミニウム / ddRAD-seq / GWAS / 遺伝資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
低アルミニウム (Al) 含有茶の栽培法と育種を達成するため,チャ遺伝資源を用いた統計遺伝学的手法による低Alに関連する原因因子の特定を試みた.まず,チャ遺伝資源のゲノム情報を整備するため,一塩基多型 (SNPs) 情報をddRAD-seq解析により取得し,31,806のDNAマーカー情報を構築した.また,2ヵ年分のチャ遺伝資源の新芽Al含量を定量したところ,年次間で正相関を示したころから,Al含量値は遺伝要因を反映した形質であることが示された.新芽のAl含量について,2ヵ年の平均値を用いたゲノミック予測 (GP) により,適度な予測精度が示された.予測精度の向上を目的に,新葉と茎からなる新芽ではなく,新葉のみのAl含量を用いたGPを行うことで予測精度の大幅な向上が確認でき,低Al含有茶の育種を進めるためのGPの有効性が示された. 施肥管理がチャの新芽およびせん枝中のAl含量に及ぼす影響を評価するため,農研機構金谷茶業研究拠点内の茶園(品種「やぶきた」)において,一番茶,二番茶,中切り剪定枝等と,各試験区の表層土壌を採取し,各種成分を分析した.植物体分析において,窒素3倍量(3N)区および無リン酸区で,対照区よりもAl濃度が低かった.土壌の交換態Al含量は,苦土石灰3倍量区で最も少なく,3N区がそれに続き,無施肥区で最も多かった.冗長性分析の結果,土壌中のリン酸含量と新芽中のAl含量に強い正の関係が見られた.以上の結果から,窒素およびリン酸施用量が新芽中のAl含量に強く影響を及ぼす可能性が示唆された. チャの水耕栽培で見られたAl添加の効果をin vitroで試験した.その結果,二次胚形成の誘導においてはAl添加で枯死するものはなく,Al添加濃度の上昇につれて小さな不定胚を多く形成する傾向にあった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
茶業研究センターで保存する遺伝資源約3000系統の整備・管理を行ない,低Alを育種目標とする交配個体群を育成しており,2021年度は交配種子の採取及び選抜を行なった.遺伝資源の整備・管理について、紙ベースでの管理から電子データでの管理への移行を進めている.水耕栽培による遺伝資源のAl吸収能力とAl応答性についても順調に解析を進めている.さらに,圃場試験の結果についても順調にデータが蓄積できている.遺伝子組換え体の作出については試行錯誤が続いているが,インド紅茶系統Tingamira normarlおよび緑茶品種さやまかおりにおいて安定的に不定胚の獲得手法を確立できた.以上のことより,全体的には概ね順調に進捗していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
以下の項目について焦点を当て,研究を推進していく. ①チャ遺伝資源のゲノム情報整備とAl定量試験 解析集団の拡充による解析結果の信頼性向上を目的に,現在までにSNPs情報を取得している約150系統の解析集団に加え,研究分担者川木が所属する静岡県茶業研究センター内で栽培されている約3000のチャ遺伝資源を対象にddRAD-seq解析によるゲノム情報を整備する.また,マーカーを整備した圃場のチャ樹について,約500系統の成葉,新芽中ならびに土壌のAl含量を研究代表者と分担者の森田,山下,廣野が元素量を分析する.いすれの成分調査は年度間による成分変動差異が考えられるため,継続的なAl定量を確認する. ②GWAS・GPによる低Alに関する遺伝要因の解明 前年度に引き続き先述した統計遺伝学的手法であるGWASにより,①で定量した形質値セットを用いてAl含量を左右する遺伝子領域を同定する.GWAS解析により同定した候補遺伝子の多くは機能未知であったため,推定された候補遺伝子については,BLASTやTMHMMツールを用いた遺伝子機能や膜タンパク質の予測を行うと同時に,研究分担者の沼津高専古川が遺伝子組換えによる過剰発現体または発現抑制変異体の作製準備に取り組む.さらに,GPについては,モデリングに適したアルゴリズムを評価する.最終的に,本研究のGPモデリングにより構築された回帰モデルとGWASで同定された候補遺伝子群について,低Al含有茶のゲノム育種への貢献度を推定する.
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Research Products
(10 results)