2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H02898
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
饗場 浩文 名古屋大学, 創薬科学研究科, 教授 (60211687)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井原 邦夫 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 准教授 (90223297)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 分裂酵母 / 寿命 |
Outline of Annual Research Achievements |
「分裂酵母の寿命を制御する新規因子群を遺伝学的に同定する」ことを目的に実施計画に基づき進めた研究において、以下の成果を得た。 (1)掲示寿命の延長する変異株をスクリーニングし、約100株の独立した変異株を取得した。その上で、戻し交配を行い、変異の純化を進め、その一部について全ゲノムシークエンス解析から候補変異を同定した。 (2)PDK1(phosphoinositide-dependent protein kinase1)のオルソログであるKsg1(必須遺伝子)の変異によって、分裂酵母の経時寿命が延長することを見出した。 (3)当該変異はKsg1のPHドメインに存在したので、Ksg1の局在と活性制御を1生細胞レベルで観察する手法を導入し解析した結果、当該変異によりKsg1の膜局在性とタンパク質の安定性が損なわれ、細胞寿命が延長することがわかった。この解析から、Ksg1は必ずしも膜に局在する必要はなく、細胞内活性が十分維持されることが正確な機能発現に重要であることを示唆した。 (4)Ksg1は複数の基質をリン酸化することが知られているが、長寿の表現型の原因となる基質はまだ分かっていない。そこで遺伝学的解析を行い、Pck2を欠損させるとksg1変異体の長寿の表現型が抑制されることを見出した。したがって、Pck2がksg1変異による寿命延長に関与している可能性が示唆された。現在、Ksg1の基質ならびに下流で寿命延長に働く因子のさらなる特定を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「分裂酵母の寿命を制御する新規因子群を遺伝学的に同定する」ことを目標の1つに掲げ研究を進めてきたが、既に長寿命変異株のスクリーニングは完了し、約100種類の独立変異株が取得できている。さらにその中からksg1変異株に着目し、当該変異が長寿命を示す理由について成果を得て論文発表を行った。並行して、他の変異株の解析も順調に進展中である。 他方、「カロリー制限以外の新たな寿命延長シグナルを同定する」との目標については、既に硫黄の欠乏が新規寿命延長シグナルであることを発表し、これ以外についても、アミノ酸やMgの欠乏が寿命延長に関わること、ならびにその機構についての解析も進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初計画を踏まえて、進める。 具体的には、長寿命変異株のスクリーニングから約100種類の独立変異株が取得できているので、これらの原因変異の同定と機能解析を進める。その上で、原因遺伝子間の機能的相互作用や、関与する生物学的イベントを抽出する。 カロリー制限以外に寿命を延長することを見出した硫黄欠乏や、アミノ酸やMgの欠乏がどのように寿命延長を引き起こすのかその分子機構を明らかにする。その上で、各種寿命延長シグナルは、並列的に機能するのかあるいは特定の段階で集約されるのかを調べる。申請者は、後者の機構の存在を予想しており、特に翻訳機能の調整が想定されるので、そのメカニズムを解明する。
|
Research Products
(6 results)