2021 Fiscal Year Annual Research Report
ムチンを介した宿主-腸内細菌の相利共生関係の解明とその応用
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20H02929
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
森田 達也 静岡大学, 農学部, 教授 (90332692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日野 真吾 静岡大学, 農学部, 准教授 (70547025)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ムチン / 腸内細菌叢 / 短鎖脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
①前年度の試験から,ラットでは,上部消化管から大腸に流入するムチンは一日あたり150mg程度であり,O-結合性糖鎖当量換算では40μmolであることが明らかになった。この試験結果に基づき, 大腸へのムチン流入量が2倍(0.6%PM群)または3倍(1.2%PM群)となるように精製ブタ胃粘膜ムチンを添加した飼料を調製した。この飼料をラットに2週間摂取させ, 大腸へのムチン流入量の増加に伴うSCFA産生量, 腸内細菌叢の変化が腸管免疫系に与える影響について解析を行った。その結果,大腸へのムチン流入量の増加は制御性T細胞およびIgAプラズマ細胞の比率を増加させることが明らかとなった。また,炎症性サイトカイン発現量の低下も認められた。これらの結果は,大腸へのムチン流入量の増加は腸管免疫系に対して抑制的に働くことで,腸管恒常性に寄与している可能性を示していると考えられる。 ②前年度の結果から,ラットではムチンの大腸への流入が腸内細菌叢の構成比を変化させることが明らかとなった。この結果を受け,ヒトでも同様の変化が認められるか否かについて,ヒト便を用いた嫌気培養を行い,SCFA産生量, 腸内細菌叢の変化について解析を行った。ラットと同様に,ヒト腸内細菌叢による発酵でもSCFAのうち特に酪酸が産生されやすいことが明らかとなった。一方で,ヒトとラットでは腸内細菌叢の構成が異なることを反映して,増加する菌種は異なっていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物試験において,大腸へのムチン流入が大腸へのムチン流入量の増加は腸管免疫系に対して抑制的に働くことで,腸管恒常性に寄与している可能性を示すデータが得られた。また,ヒト便での嫌気培養では,ムチンの発酵によりSCFAのうち特に酪酸が産生されやすいことが明らかとなった。一方で,ヒトとラットでは腸内細菌叢の構成が異なることを反映して,増加する菌種は異なっていることを明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
ラットでの動物試験およびヒト便での嫌気培養法を用いて,大腸での主要な発酵基質であるデンプン,食物繊維とムチンの3種類を比較解析する。これらの試験により,ムチンの大腸への流入が宿主-腸内細菌の共生関係に及ぼす影響を明らかにするとともに,他の発酵基質で認められる生理作用との質的・量的違いを明らかにしていく。また,本年度に認められた,ムチンの腸管免疫系に対して抑制的に働くという効果を実験的大腸炎モデルを使って検証する。
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Research Products
(3 results)