2021 Fiscal Year Annual Research Report
瀬戸内少雨地域のため池が地域的な気象緩和と温室効果ガス放出に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
20H03109
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
奥 勇一郎 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (10456832)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂部 綾香 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (40757936)
伊藤 雅之 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (70456820)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ため池 / 温室効果ガス排出量 / 気象緩和効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
国土数値情報の100mメッシュの土地利用データを用いて、兵庫県の瀬戸内地域を対象にため池の形状およびその地理的な分布について整理した。領域気象モデルを用いて同地域のため池を解像した再現実験とため池の土地利用区分を住宅地に改変した感度実験を試行した。任意の時刻における再現実験の気温と同じ時刻における感度実験の気温の差をもって瞬間的な気象緩和効果としたが、単にその気温差だけでなく気温差の継続時間の視点からも気象緩和効果として重要であることから、それらの時空間分布を調べた。一方、体感的な暑さは気温だけでなく相対湿度や日射量、風速にも依存する。環境省の熱中症警戒アラートの評価指標として採用されているWBGTを体感的な暑さを示す指標とし、気温と同様に再現実験のWBGTと感度実験のWBGTの差についても時空間分布を調べた。 一般的な皿池といえる兵庫県加古川市のため池において、温室効果ガス(二酸化炭素及びメタン)の水中での濃度と水面からの放出、水質の時空間的変動を明らかにするための観測を行った。渦相関法による池水面と大気間の温室効果ガスフラックス交換量の観測からは、二酸化炭素については夏の高温期を中心に池が吸収、メタンについては池からの放出する傾向が示された。その他、国内では代表的な浅い富栄養湖である諏訪湖、海外ではフィリピンの熱帯湖沼の観測結果との比較も行うことで、ため池の温室効果ガス動態の変動要因について検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
加古川市のため池における定点観測体制が充実し、二酸化炭素やメタンの池水面と大気間の交換量の連続測定を開始することができた。これにより、両者の詳細な時間変動が観測でき、気象条件など環境要因の変動に対する応答を検討することが可能になる。また、次年度に向けて、溶存酸素や水質の観測体制を整えることができ、温室効果ガス動態の季節変動要因に関する測定を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
二酸化炭素やメタンの水面-大気間の交換についての情報が得られ始めたが、その変動要因について検討する必要がある。そのため、降雨,気温,風速といった気象条件とガス交換量の関係を解析する.とりわけ,二酸化炭素については藻類の光合成活動に寄与する光合成有効放射量,メタンについてはバブル放出に寄与する気圧に着目する.さらに,水に溶存する二酸化炭素やメタンの濃度、植物プランクトンや藻類のバイオマスの時間変動の調査を進める。また、様々なタイプの池での観測を行う必要があるため、山間部の谷地形に設置されたため池など、複数の池においても観測を進める。
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Remarks |
温帯湖沼との比較として、フィリピンの研究者と共に深度の異なる湖での観測を行ってきたが、その結果を誌上発表した。
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Research Products
(6 results)