2020 Fiscal Year Annual Research Report
新規ペプチド“NURP”と“NSRP”のトランスレーショナルリサーチ
Project/Area Number |
20H03153
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
中原 桂子 宮崎大学, 農学部, 教授 (90315359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 圭介 宮崎大学, 農学部, 准教授 (20612386)
永延 清和 宮崎大学, 農学部, 教授 (40264353)
井上 賀之 宮崎大学, 農学部, 助教 (60807436)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ニューロメジンU / ニューロメジンS / ニューロメジンU前駆体関連ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
当初計画どおり、NURPとNSRPの受容体がどこに分布し、どのようなものかを明らかにすることは、それらのペプチドの作用部位の探索、作用機序の解明、あるいは作動薬(アゴニスト)や遮断薬(アンタゴニスト)を作成する上で極めて重要になる。NURPとNSRPのN端には共通したアミノ酸配列があり、共通した受容体が存在するかも知れない。すでにNURPとNSRPがNMUおよびNMSの受容体には結合しないことを報告している。そこで、NURPとNSRPをラットの側脳室に投与し、神経活性部位の検索を行った。以前の予備実験では、主に視床下部に限局したが、脳幹部も含めて、詳細に検討した。尚、NMUとNMSも同様に投与実験を行い、4群において比較検討した。 主な結果は以下の通りである。NURP及びNSRP投与群では、視交叉上核、視索上核、扁桃体中心核でのcFos発現は認められなかったが、NMU及びNMS投与群では、室傍核、視索上核、扁桃体中心核で顕著なcFos発現が認められた。以前、プロラクチン分泌に対して、NURPとNMUの投与が全く逆の効果を示したので、次に、弓状核におけるcFos発現の発現領域を詳細に調べた。その結果、NMU投与では弓状核内側領域で発現し、この領域はNMS投与でも観察された。一方で、NURPでは弓状核外側領域で発現が認められた。また、この領域ではNSRP投与でもcFosが発現した。さらに、NMU, NMS, NSRP投与ではcFos発現が観察されなかった海馬―偏桃体の腹側海馬台において、NURPはcFos発現を起こした。 以上の結果から、NMUとNMSの前駆体中の新規ペプチドのNURPとNSRPは、それぞれ、NMUやNMSと異なる部位に作用し、NMUとNMSと異なる独自の生理機能を担っている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今回の結果は、当初掲げた3つの課題、(1)NURPとNSRPの中枢における生理作用の解明とその作用機序の解明(言い換えれば中枢での生理学的意義)、(2)NURPとNSRPの受容体の同定、(3)NMUとNURP、 NMSとNSRPがどのように同じ前駆体から切り出されるのか、あるいは部位特異的に切り出されるのか、の第2の課題に対する解答を示しており、これにより、残りの2つの課題が、残す課題の前提になりうると推測されるからである。また、今回の結果はBiochem. Biophys. Res. Commun.に掲載されたことも評価に値する。
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Strategy for Future Research Activity |
新規ペプチドの生理機能が判明すれば、その生理機能不全の治療や、あるいは機能亢進への治療などの薬の開発が可能となる。もちろん動物治療薬のみならず人への応用や、産業動物での応用も考えられる。これまでの私達の研究結果を概観した時、「NURPによるプロラクチンの促進作用とNMUによるプロラクチンの抑制作用」の研究結果が、臨床での応用に適していると推測される。なぜなら、人や動物でのプロラクチン分泌疾患は多く報告されているからである。例えば、人や犬のhyperprolactinemia(高プロラクチン血症)などがそれにあたる。近年、NMUの受容体タイプⅡに親和性を有するアゴニストCPN129(仮称)が東京薬科大学の研究グループから報告されている。そこで、2021年度は、このCPN129を利用しての応用研究に着手する。具体的には(1)hyperprolactinemia をラットで実験的に作出し(エストロゲンのサイラスティックチューブを皮下に埋没すると、高エストロゲンのフィードバックでプロラクチンが上昇する)、これにCPN129を中枢、あるいは末梢投与して、プロラクチンが抑制されるか否かを調べる。次に、(2)ラットの生理的高プロラクチン状態(発情前期、泌乳期、ストレス期、あるいは偽妊娠期)をCPN129が抑制するか否かを調べる。(3)以前の実験ででは、NURP投与によるプロラクチンの上昇は弓状核のドーパミンニューロンの抑制の結果であり、一方で、NMUのプロラクチン抑制は弓状核のドーパミンニューロンの活性化の結果であると、推測された。そこで、このCPN129の作用が果たして、弓状核のドーパミンニューロンへの作用であるのか否かをcFos発現で検証する。
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