2021 Fiscal Year Annual Research Report
新規ペプチド“NURP”と“NSRP”のトランスレーショナルリサーチ
Project/Area Number |
20H03153
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
中原 桂子 宮崎大学, 農学部, 教授 (90315359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 圭介 宮崎大学, 農学部, 准教授 (20612386)
永延 清和 宮崎大学, 農学部, 教授 (40264353)
井上 賀之 宮崎大学, 農学部, 助教 (60807436)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ニューロメジンU / プロラクチン / ニューロメジンU前駆体関連ペプチド / ドーパミン |
Outline of Annual Research Achievements |
新規ペプチドの生理機能が判明すれば、その生理機能不全の治療や、あるいは機能亢進への治療などの薬の開発が可能となる。もちろん動物治療薬のみならず人への応用や、産業動物での応用も考えられる。近年、NMUの受容体タイプⅡに親和性を有するアゴニストCPN129(仮称)が東京薬科大学の研究グループから報告されている。そこで、昨年の報告書に記した次年度研究計画に従い、2021年度は、このCPN129を利用しての応用研究を行った。主な結果は以下の通りである。 (1)エストロゲンのサイラスティックチューブを皮下に埋没することで、高エストロゲンのフィードバックによる高プロラクチン血症(hyperprolactinemia) をラットで作出できた。そこで、これにCPN129を中枢、あるいは末梢投与して、プロラクチンが抑制されるか否かを調べた結果、CPN129の中枢および末梢投与いずれもプロラクチンは完全に抑制された。(2)ラットの生理的高プロラクチン状態(発情前期、泌乳期、ストレス期、あるいは偽妊娠期)において、CPN129が抑制するか否かを調べた結果、CPN129はすべての条件下でプロラクチンの上昇を阻止した。(3)CPN129の作用が果たして、弓状核のドーパミンニューロンへの作用であるのか否かをcFos発現で検証した結果、弓状核のドーパミンニューロンの一部にcFosの発現が認められた。以上の結果、NMUのアゴニストCPN129は高プロラクチン血症の病態の改善に極めて有効と推測された。 ところで、上記結果が予想以上に早く進行したため、昨年の10月以降は「令和3年10月からの前倒し追加配分」により、NMUアゴニストの副作用を検討した。その結果、NMUアゴニストをラットの脳室内あるいは末梢に投与し、体温、行動、などの生理機能に対する副作用の有無を調べた結果、体温の上昇、行動量の増加が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今回の結果は、当初掲げた以下の3つの課題を検証することであった。(1)hyperprolactinemia をラットで実験的に作出し(エストロゲンのサイラスティックチューブを皮下に埋没すると、高エストロゲンのフィードバックでプロラクチンが上昇する)、これにCPN129を中枢、あるいは末梢投与して、プロラクチンが抑制されるか否かを調べる。次に、(2)ラットの生理的高プロラクチン状態(発情前期、泌乳期、ストレス期、あるいは偽妊娠期)をCPN129が抑制するか否かを調べる。(3)以前の実験ででは、NURP投与によるプロラクチンの上昇は弓状核のドーパミンニューロンの抑制の結果であり、一方で、NMUのプロラクチン抑制は弓状核のドーパミンニューロンの活性化の結果であると、推測された。そこで、このCPN129の作用が果たして、弓状核のドーパミンニューロンへの作用であるのか否かをcFos発現で検証する。 その結果、全ての課題において、先の「概要」に記した様に、予想以上に早い結果が得られた。そこで、令和3年10月からの前倒し追加配分を申請し、この追加配分によって、CPN129の副作用の検討までも行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今までの結果を受けて、今後は以下のような研究を展開したいと思っています。NMUが生理的にもラットの妊娠や偽妊娠時の維持(プロラクチン分泌に関して)に重要な役割を演じているかを確認する。例えば、妊娠や偽妊娠時に起こるプロラクチンサージの時間帯の前後で、ラットの視床下部を採取し、NMUあるいはNURP mRNAの発現量に変化があるか否かを検討する。また、継続している課題である「NURP、NSRPはNMUやNMSと同時に切り出されるのか?あるいは部位特異的に切り出されるのか?」の研究を引き続き行う。それぞれ4つのペプチドの特異抗体を用いて、脳の各部位(視床下部の各神経核、大脳辺縁系、基底核、脳幹、小脳などを採取)において、それらのペプチドの含量をRIAで解析する。予備実験では視床下部においてNURPはNMUよりも高い値を示したため、前駆体から別々に切り出される可能性が推測された。次に、視床下部神経核については、RIAでは検出されない場合、室傍核、弓状核、視索上核、視交叉上核、腹内側核あるいは背内側核などをパンチアウト法で採取する。それぞれのペプチドのmRNAの発現量をリアルタイムPCRで測定する(但し、スプライシングの過程によってはそれぞれを分離して測定できない可能性有り)。また、脳室内投与後のcFos発現が異なる部位での切断酵素を調べる。
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Research Products
(1 results)