2022 Fiscal Year Annual Research Report
新規ペプチド“NURP”と“NSRP”のトランスレーショナルリサーチ
Project/Area Number |
20H03153
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
中原 桂子 宮崎大学, 農学部, 教授 (90315359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 圭介 宮崎大学, 農学部, 准教授 (20612386)
永延 清和 宮崎大学, 農学部, 教授 (40264353)
井上 賀之 宮崎大学, 農学部, 助教 (60807436)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ニューロメジンU(NMU) / プロラクチン / ニューロメジンU前駆体関連ペプチド(NURP) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、新規ペプチドであるニューロメジンU前駆体関連ペプチド(NURP)等の生理作用を明らかにしてきた。その中で、NURPおよびニューロメジンU(NMU)がプロラクチン(PRL)分泌に対して、前者は亢進し、後者は抑制することを見出しすでに公表した。そこで、2022年度は、NURPやNMUのPRL分泌への関与が生理的な条件(性周期や妊娠中)でも重要なのか否かを検討した。 実験1では、性周期中の雌ラットにおいてNURP側脳室投与が血中PRL濃度に及ぼす影響を調べた。発情後期(D1期)にNURPを投与したところ、投与から20分後の血中PRL濃度が、対象群と比べて有意に上昇した。しかし、発情前期(P期)ラットにおいて同様な分泌促進作用が認められ、結果的にはNURPのPRL分泌促進作用に、性周期ステージの違いは認められなかった。次に、実験2では、内因的にPRL分泌量が変化する際に視床下部に局在するNURP/NMUがどのように発現変化しているのか、そのmRNAの発現変化をリアルタイムPCR法で調べた。その結果、D1期とP期におけるNURP/NMU mRNA発現に有意な差は認められなかったが、(妊娠時のモデルとして用いた)偽妊娠ラットにおいては、有意な変化が認められた。つまり、偽妊娠時の深夜に観察されるPRLノクターナルサージ時には、視床下部のNURP/NMU mRNA発現が低下していることが判明した。 以上の結果、性周期よりも(偽妊娠もしくは)妊娠時のような著しいPRL濃度の上昇が必要とされる場面においてNURPが関与している可能性が推測された。一方で、この(偽妊娠もしくは)妊娠ラットの血中PRL濃度の上昇には、NURPによるPRL分泌亢進に加えて、抑制的作用を有するNMUの発現低下も起因している可能性が推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の研究は、これまで3年間の実績をもとに、以下の3つの課題について研究を展開することであった。(1)NMUが生理的にもラットの妊娠や偽妊娠時の維持(プロラクチン分泌に関して)に重要な役割を演じているかを確認する。例えば、妊娠や偽妊娠時に起こるプロラクチンサージの時間帯の前後で、ラットの視床下部を採取し、NMUあるいはNURP mRNAの発現量に変化があるか否かを検討する。(2)継続している課題である「NURP、NSRPはNMUやNMSと同時に切り出されるのか?あるいは部位特異的に切り出されるのか?」の研究を引き続き行う。(3)それぞれ4つのペプチドの特異抗体を用いて、脳の各部位(視床下部の各神経核、大脳辺縁系、基底核、脳幹、小脳などを採取)において、それらのペプチドの含量をRIAで解析する。 (1)については、前述したように視床下部のNMUあるいはNURP mRNAの発現量が、偽妊娠時において変化することが判明し、NURPとNMUが生理的にも偽妊娠時のPRLサージ形成に重要な役割を演じていることが伺えた。(2)については、視床下部においてもし、同時に切り出されているのであれば、値は等しくなるはずであるが、結果ではNURPの方がNMUよりも有意に高い値を示したため、前駆体から別々に切り出される可能性が推測された。(3)については、現在も継続中である。 昨年度まで、実験は順調に進行し、当初予定よりやや早く進行しているため、前倒し予算を使用することになったが、そのおかげで、最終年度には、ほぼ全項目の達成が可能と推測している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度であり、これまでの結果および当初計画を踏まえて、以下の2点について重点的に研究を行う。 まず、昨年に引き続き、NURP、NSRPはNMUやNMSと同時に切り出されるのか?あるいは部位特異的に切り出されるのか?についての研究を継続する。これについては、視床下部においては、NURPがNMUより高い含量を示したことで、同時に切り出される可能性は低いと推測されたが、その他の脳の各部位や視床下部の各神経核においても、それらのペプチドの含量をRIAで解析する。 視床下部神経核については、RIAでは検出されない場合、室傍核、弓状核、視索上核、視交叉上核、腹内側核あるいは背内側核などをパンチアウト法で採取する。それぞれのペプチドのmRNAの発現量をリアルタイムPCRで測定する(但し、スプライシングの過程によってはそれぞれを分離して測定できない可能性有り)。また、脳室内投与後のcFos発現が異なる部位での切断酵素を調べる。すでにNURPの分布については報告済みである。 次に、臨床への応用については、これまでのラットを用いた基礎研究において、NMUやNURPが様々な生理作用を示し、特に交感神経系への作用が見られたことから、基礎体温の調整の臨床応用が考えられる。一方で、プロラクチン分泌に対してのNMUとNURPが相反的作用を示すことから、プロラクチン分泌調整への応用が推測される。前者は副作用を及ぼす可能性もあることから慎重を帰すべきと考え、後者について、動物病院と協議しながら犬や猫のhyperprolactinemia への応用を模索する。
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