2020 Fiscal Year Annual Research Report
脊椎動物の染色体凝縮を担うコンデンシンの構造基盤と動的挙動の解明
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20H03197
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
原 幸大 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (80729343)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 博 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (40336590)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | X線結晶構造解析 / 染色体凝縮 / コンデンシン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脊椎動物の染色体凝縮を担うコンデンシンのnon-SMCサブユニットの結晶構造を高分解能で決定すると共に、ヌクレオソームやSMCサブユニットとの複合体を再構成し、SAXS、Cryo-EMにより動的挙動を解析することを目標とする。また、染色体の再構成系を用いた構造機能相関解析を通して、菌類のモデルでは説明することができない脊椎動物特有の染色体凝縮の作用機序を原子レベルで明らかにすることにある。染色体凝縮の機能不全はがんや小頭症を引き起こすことから、その分子メカニズムを理解することで抗がん剤創薬の開発が期待できる。 本年度は、コンデンシンIIのnon-SMCサブユニットの一つであるCAP-G2-H2の発現系の再構築と調製方法の検討を重点的に行った。コンデンシンIIは菌類は持たず、脊椎動物だけが持つコンデンシンだが、大腸菌を宿主とした組換えタンパク質発現系ではヒトホモログの組換えタンパク質の過剰発現と可溶性画分への局在がみられなかった。そこで、様々な脊椎動物ホモログの組換えタンパク質発現系を構築し、組換えタンパク質の性状を評価した。その結果、あるホモログの組換えタンパク質で過剰発現と良好な可溶化がみられた(未発表)。また、ヘパリンカラム、陰イオン交換カラム、ゲルろ過カラムクロマトグラフィーを用いた精製方法により、結晶化やCryo-EMによる構造解析に適した純度が高い、会合状態も良い組換えタンパク質の調製に成功した。今後、結晶構造解析に向けた結晶化条件の探索や、Cryo-EMによる構造解析のための予備実験を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コンデンシンIIのnon-SMCサブユニットの結晶化グレードでの組換えタンパク質の調製方法は、現在まで確立されていない。申請者はコンデンシンIIのnon-SMCサブユニットのうち、CAP-G2-H2の調製方法を確立しており、この分野における大きなプライオリティーが得られたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はコンデンシンIのnon-SMCサブユニットであるCAP-D2-H(ヒトホモログ)の組換えタンパク質の純度を向上させるために、発現系の再構築と結晶化条件の再探索を行う。CAP-G-H(ヒトホモログ)については、2本鎖DNAとの複合体の共結晶が得られているため、結晶の最適化と構造解析を進める。 コンデンシンIIのnon-SMCサブユニットに関しては、CAP-G2-H2は結晶化条件の探索やCryo-EMの予備実験に着手する。CAP-D3-H2に関しては、様々な生物種ホモログを用いて大腸菌発現系での組換えタンパク質の調製を試みたが、良好な結果が得られていない。今年度、基盤研究(B)の支援により導入したバキュロウイルス・昆虫細胞発現系による組換えタンパク質の調製方法の確立を目指す。
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