2021 Fiscal Year Annual Research Report
オーキシン極性輸送の成立に不可欠な新現象「PINクラスター」形成に関する研究
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20H03286
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
楢本 悟史 北海道大学, 理学研究院, 助教 (30612022)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オーキシン / PIN / cluster |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、 オーキシン排出トランスポーターであるPINタンパク質が細胞膜上で多量体様のクラスター構造を形成すること(以下、PINクラスター)、ならびに、PINクラスターが微小管とは排他的に局在することを独自に見出した。本研究においては、シロイヌナズナにおけるPINクラスターの生理機能の解明を目指す。また、ゼニゴケなどの他植物種におけるPINクラスターの保存性の有無について解析を行う。 本年度は、昨年度作成したPIN2とMAB4の蛍光タンパク質の共発現体を用いた観察を行った。共焦点レーザー顕微鏡を用いて、PIN2とMAB4の同時観察を行うことで、PIN2とMAB4は高頻度に共局在しており、両者は直接相互作用することを見出した。また、PINは、細胞分裂直後には細胞板ではクラスターを形成していないことを明らかにした。加えて、PINは、生物学的相分離の様式を経てクラスター形成されることを示唆する結果を得た。 一方、ゼニゴケにおいては、昨年度作成したPIN1-GFP発現体の観察を行った。その結果、予備的な実験ながらも、PIN1は細胞の腹側の部位に局在する可能性が示唆された。また、シロイヌナズナにおけるPINの局在性御に関わる因子の突然変異体を作成することで、これらは、Mppin1変異体と類似の表現型を示すことを見出した。本結果により、ゼニゴケはシロイヌナズナとは異なり、明確な形態形成を行わないにも関わらず、PINの局在制御に関わる分子メカニズムが保存されていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した研究プロジェクトを、目標通り達成するのに十分なタイムスケールで、実行が進行しているほか、共同研究によりPINの細胞膜中の流動性を制限するメカニズムを同定することに成功した(Glanc et al., 2021)。これはCurr Biol誌に論文公表済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
シロイヌナズナにおいてはPINクラスターの細胞分裂時の動態の更なる解析を行う。また、重力屈性などの屈性時におけるPINクラスターの挙動を解析する。また、ゼニゴケにおいては、今後、pin1と類似の表現型を示す突然変異体におけるPIN1-GFPの局在解析を行う。また、抗PIN1抗体を用いた解析を行い、PIN1の詳細な局在解析を行う。
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