2021 Fiscal Year Annual Research Report
皮質脊髄路が両側性投射を持つ遺伝子改変マウスを用いた同側性投射線維の役割解明
Project/Area Number |
20H03348
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
桝 正幸 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20243032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桝 和子 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50344883)
岡田 拓也 筑波大学, 医学医療系, 助教 (60451697)
小金澤 禎史 筑波大学, 医学医療系, 助教 (80431691)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 皮質脊髄路 / 遺伝子改変マウス / 両側性投射 |
Outline of Annual Research Achievements |
皮質脊髄路は大脳皮質5層の錐体ニューロンに起始し脊髄へ投射する主要な下行性経路であり、脊髄運動ニューロンの活動を制御する。マウスではほとんど全ての線維が延髄の錐部で正中交差して後索を下行し反対側に投射するが、少数(~5%)の線維は交差せずに前索を下行する。 応募者らは、ヘパラン硫酸エンドスルファターゼSulf1とSulf2を欠失したダブルノックアウト(DKO)マウスが錐体交差異常を持ち、非交差線維が同側の脊髄に投射するため脊髄への投射が両側性になること、その結果、片側の運動野を電気刺激すると両側に運動と筋電図が誘発されることを明らかにした。この投射異常により運動機能に障害が起こるかどうかを調べるために、Grid walking test、Staircase test、Single pellet reaching testを実施した。いずれもマウスで運動機能を評価するために用いられる行動実験であるが、DKOマウスはいずれの試験でも野生型マウスより成績が悪かった。歩行は正常であり、Rotarod testでも正常であることから、粗大な運動、協調運動、定型的運動、運動学習などには異常が無いが、手指などを用いる精細な運動の調節に異常があると考えられた。 しかしながら、異常な同側性投射が運動機能に関与しているのか、DKOマウスで見られる運動障害が同側投射線維が出現したために生じたのかどうかは不明である。そこで、本研究では、このDKOマウスで片側の運動野を可逆的または不可逆的に抑制または障害した結果、同側および反対側の運動がどのように変化するかを調べることにより、皮質脊髄路の同側性投射の役割を明らかにすることを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以前の予備的な研究から、麻酔したマウスを定位脳固定装置に固定し、液体窒素で冷やした金属製プローブを一次運動野直上の頭蓋骨に押し当てることにより、運動皮質を損傷させることができることが分かっている。損傷後に脳を取り出して切片を作製することにより、適切な損傷条件を決定した。また、皮質損傷マウスを用いて、各種運動実験(グリッド歩行試験、シリンダー試験、staircase試験、single pellet reaching試験)を実施し、運動障害に関するデータを得ることができた。 次に、一次運動野にDEADDsの1つであるAAV-hM4Di-mCherryウイルスを注入して人工受容体を発現させ、特異的アゴニストCompound21を投与することによりニューロンの活動を抑制した条件で上記の運動実験を実施し、運動障害が起こるかどうかを検討した。注入の条件設定を決定し、予備的なデータを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
hM4Diを用いて一次運動野ニューロンを可逆的に抑制したマウスで各種運動実験を実施し、障害側(抑制側)と同側および反対側の前肢の運動を中心に解析を行い、運動機能に異常が生じるか、どちらの側に変化が起こるか、野生型とDKOマウスで差があるかを明らかにする。さらに、hM3Dqを用いて一次運動野ニューロンを活性化した場合、および別のDREADDsを用いて抑制した場合の運動障害についても検討する。
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Research Products
(3 results)