2020 Fiscal Year Annual Research Report
肥満環境におけるTh17/Tregバランスをコントロールする機能性脂質の同定
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20H03455
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Research Institution | Kazusa DNA Research Institute |
Principal Investigator |
遠藤 裕介 公益財団法人かずさDNA研究所, 先端研究開発部, 室長 (80612192)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Th17 / Treg / 脂質代謝 / 高度肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脂質代謝に焦点をあて、肥満環境におけるTh17/Tregバランスをコントロールする作用を持つ脂質を同定することを目的とした。本年度は、Th17/Treg細胞分化を制御するDe novo脂質代謝経路の同定を行なった。ACC1は脂肪酸合成の律速酵素であるが、最上流に位置しているため、どの下流代謝物がTh17/Tregバランスを規定しているか定かではない。予備的実験結果を参考にACC1より下流で作用している酵素群についてCRISPR/Cas9システムを用いて遺伝子欠損させ、Th17/Tregの個性を決定している脂質代謝経路・産物の同定を行ない、以下に示す3つの新知見を見出した。
1. RORgtの脂質リガンドを合成する代謝酵素の同定:T細胞株を用いたCRISPR/Cas9スクリーニングシステムを用いてRORgtの転写活性化能を指標として必須酵素の探索を行ったところ、5つの酵素が絞り込まれた。また、これら5つの酵素を同時に欠損させることでプライマリーTh17細胞分化が著しく抑制されることが示された。これらの酵素は脂肪酸の中でも不飽和脂肪酸の合成、およびリン脂質、リゾリン脂質への転移に必須となる役割をそれぞれ持っていることが示された。 2. RORgt脂質リガンドXの同定:研究成果1で示した5つの酵素を同時に欠損させたT細胞のリピドミクス解析を行い、特異的に低下する脂質を16種類見出している。これらのうち脂質を添加することによってTh17細胞分化誘導能の回復が認められるか解析をしたところ、脂質Xの添加によって劇的に回復することが認められた。 3. Tregの恒常性を司る脂質代謝酵素の同定:RNA-seqとプロテオームのマルチオミックス解析によりTreg特異的に発現し、組織Tregの恒常性に必要な代謝酵素Yを同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度は当初の計画に加えて、Th17細胞とTregの機能分化を司る代謝酵素、および脂質代謝物の同定に成功した。また、それぞれの細胞における特殊な脂質代謝経路・代謝物の分子作用点についてもChIP-seq解析、細胞呼吸などの代謝アッセイシステム、さらに電子顕微鏡などの解析ツールを行い、明らかにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は以下に示す研究プランを行う予定である。 1. Th17/Tregバランスを制御する環境脂質代謝物の同定(2021年度) これまでのリピドミクスデータを基に、Th17・Treg細胞分化培養液に直接候補脂質を添加することで、Th17、およびTreg分化能が抑制・亢進するか解析を行う。Th17細胞分化能についてはIL-17AやIL-17Fのサイトカイン産生能、およびRORgtの発現レベルを基に判断する。また、Treg分化能についてはFoxp3の発現誘導を基に評価を行う。絞り込まれた候補脂質については、さらに自己免疫疾患誘導能(Th17細胞)、炎症抑制能/サプレッションアッセイ(Treg)についてマウス個体レベルで再評価を行う。 2. 脂質代謝制御によるTh17/Tregバランス・肥満関連病態のコントロール(2023年度) 研究項目1で得られる脂質情報を基に、候補脂質成分を多く含む、もしくはほとんど含まない食餌をオーダーメイドで作製し、マウスに与えることで生体内でのTh17/Tregバランス、および肥満誘導性免疫疾患への影響について評価する。同様に、Th17/Tregバランスを規定するDe novo脂質代謝酵素KOマウス・阻害剤を用いて肥満病態への影響を解析する。免疫疾患モデルとしてはTh17誘導性の自己免疫疾患モデルであるEAE病態、および糖尿病(インスリン分泌・耐糖能・尿糖)について中心に解析を行う。また、血中および臓器でのリピドミクス解析にて標的となる脂質が増減しているかについて確認を行う。
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[Journal Article] A long noncoding RNA regulates inflammation resolution by macrophages through fatty acid oxidation activation.2020
Author(s)
Nakayama Y., Fujiu K., Yuki R., Oishi Y., Suimye M., Morioka M., Isagawa T., Matsuda J., Oshima T., Matsubara T., Sugita J., Kudo F., Kaneda A., Endo Y., Nakayama T., Nagai R., Komuro I., Manabe I
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Journal Title
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
Volume: 25
Pages: 14365-14375
DOI
Peer Reviewed
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