2020 Fiscal Year Annual Research Report
Deciphering colorectal carcinogenesis by the genomic analysis of colorectal epithelial cells
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20H03513
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
垣内 伸之 京都大学, 医学研究科, 助教 (90839721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
妹尾 浩 京都大学, 医学研究科, 教授 (90335266)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大腸がん / クローン進化 / クローン拡大 / 自然選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではヒトの生涯の間に正常大腸上皮細胞がどのような遺伝子変異を獲得し、クローン拡大ないし自然淘汰されるのかを明らかにする。また、初期から進行期までの大腸腫瘍性病変を高精細に解析し、腫瘍進化の過程における遺伝子変異クローンの自然選択の詳細を明らかにする。この目標を達成するため、本研究は①正常大腸粘膜のゲノム解析、②初期良性腫瘍のゲノム解析、③大腸がんの解析、④機能解析から成る。研究初年度にあたる2020年度は研究項目①~③を実施した。ゲノム解析のための十分な検体収集と、微量検体からの正確なゲノム解析のための技術的基盤の確立を優先した。 研究項目① 正常大腸粘膜のゲノム解析…本研究項目では主に大腸切除術を受けた高齢者の正常大腸粘膜からパンチ生検鉗子をもちいて一定面積(4mm2)の粘膜を採取した後、陰窩単離を行い、上皮細胞のみからDNAを抽出し全エクソン解析を行った。 研究項目② 初期良性腫瘍のゲノム解析…大腸腺腫および異型陰窩を採取し、検体を蓄積した。 研究項目③ 大腸がんの解析…遺伝子変異負荷の高い大腸癌を、TCGAコホートのデータを用いて解析し、腫瘍進化の証拠を統計学的に検定する解析アルゴリズムを構築した。 また、学会発表を複数行った。その他、正常細胞における遺伝子変異クローンに関する総説をNat. Rev. Cancer誌に発表した。本研究の派生として、胃粘膜における正常細胞と早期病変の腫瘍進化について論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は①正常大腸粘膜のゲノム解析、②初期良性腫瘍のゲノム解析、③大腸がんの解析、④機能解析から成る。研究初年度にあたる2020年度は研究項目①~③を実施した。ゲノム解析のための十分な検体収集と、微量検体からの正確なゲノム解析のための技術的基盤の確立を優先した。詳細は以下の通りであるが、おおむね研究計画の通りに進捗している。また、大腸における発癌基盤の解明の着想は他臓器にも応用可能であり、胃における発癌についても解析を行った。 研究項目① 正常大腸粘膜のゲノム解析…本研究項目では主に大腸切除術を受けた高齢者の正常大腸粘膜からパンチ生検鉗子をもちいて一定面積(4mm2)の粘膜を採取した後、陰窩単離を行い、上皮細胞のみからDNAを抽出し全エクソン解析を行った。 研究項目② 初期良性腫瘍のゲノム解析…大腸腺腫および異型陰窩を採取し、検体を蓄積した。 研究項目③ 大腸がんの解析…遺伝子変異負荷の高い大腸癌を、TCGAコホートのデータを用いて解析し、腫瘍進化の証拠を統計学的に検定する解析アルゴリズムを構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目① 正常大腸粘膜のゲノム解析…本研究項目では主に大腸切除術を受けた高齢者の正常大腸粘膜からパンチ生検鉗子をもちいて一定面積(4mm2)の粘膜を採取する。採取した粘膜は申請者らが最適化した条件で上皮細胞と基底膜との接着をEDTA処理により阻害した後、実体顕微鏡下で行うマイクロマニュピレーションにより高効率に陰窩単離を行い、上皮細胞のみからDNAを抽出し全エクソン解析を行う。効率化を図るため、複数の陰窩をまとめてシーケンスした際に、微小な分画の遺伝子変異を正確に検出するために、分子バーコードシーケンスの技術を開発する。 研究項目② 初期良性腫瘍のゲノム解析…大腸腫瘍の最初期病変としてAberrant crypt foci(ACF)が指摘されている。ACFは異型腺管が数十~数百個集簇した病変である。大腸がん患者の切除標本からメチレンブルー生体染色を用いてACFを同定し、病変内の陰窩を単離する。これを研究①と同じく微小検体からの正確な全エクソン解析および全ゲノム解析を行うことでACFが有するドライバー変異およびその変異シグニチャを抽出する。 研究項目③ 大腸がんの解析…研究項目①②で検出した正常組織と大腸良性腫瘍における遺伝子変異について、TCGAなどの大規模がんゲノム解析プロジェクトの公開データを利用して大腸がんのドライバー遺伝子と比較することで、大腸発がん過程におけるクローン進化に関与する遺伝子を抽出する。また、マイクロサテライト不安定性大腸がん(MSIがん)やDNAポリメラーゼε異常大腸がん(POLE変異がん)のように、他のがんに比べて約100倍の変異数を呈するHypermutation型腫瘍に着目して、腫瘍内マルチサンプリングを行い網羅的ゲノム解析を実施する。昨年度に確立した解析パイプラインを用いて、今後は新規症例の解析により解析の精度の向上を目指す。
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